局所的な圧迫が低強度な運動中の中枢神経活動に与える影響:機能的MRIによる研究
【研究分野】スポーツ科学
【研究キーワード】
fMRI / 力の知覚 / 一次運動野 / 神経活動の相関現象 / 虚血 / 大脳皮質一次運動野 / 力覚 / 認知神経科学 / 力 / 知覚 / efference copy
【研究成果の概要】
局所的な血流制限下で筋運動をおこなうと、その運動強度が筋力の向上や筋肥大を期待できないほどの低強度であっても、顕著な筋力と筋断面積の増加が引き起こされる。この大きな効果の要因には、局所的な圧迫に伴う筋内環境の悪化(代謝産物の蓄積や低酸素化)が引き起こす、(1)運動中の筋の活動レベルや運動後の(2)成長ホルモン及び(3)ノルアドレナリンの血中濃度の顕著な増加が挙げられる。これらの効果の要因には、内分泌系や交感神経活動をはじめとした中枢神経系が深く関係していると考えられるが、そのメカニズムについては不明な点が多い。そこで本研究は、局所的な圧迫が低強度な運動中の中枢神経活動量に与える影響を明らかにし、大きな効果を引き起こした血流制限下の筋運動に対する活動筋の適応機序を再検討した。
虚血は、たとえ発揮される筋力レベルが同様であったとしても(虚血なしに比べ)一次運動野(MI)の神経活動を有意に増加させる。この虚血によるMIの神経活動の増強は、虚血の末梢神経機能への影響がないこと(正中神経刺激による神経活動電位と体性感覚誘発電位のN20の潜時及び最大振幅を自然血流下と虚血下で比較したが変化はみられなかった)、そして筋電図積分値に差異がみられなかったことから、脊髄下での神経活動の変化もその原因の一つであろうと推察される。また、この虚血に誘発されるMIの神経活動の増強には、発揮筋力レベルに関係なく、力の知覚の追加的な増加をともなうことが明らかとなり、MI神経活動と力の知覚との密接な相関関係が確認された。
したがって、虚血によるMI神経活動の増加が局所的な血流制限下の筋運動の大きな運動効果を引き起こした、中枢性の要因の一つであると推察される。また、MI神経活動と力の知覚の密接な相関関係の発見は、ヒトが筋収縮の結果、何を感じ、それらをどのように意識的に知覚するのか、意識的な知覚と大脳皮質の神経活動のさらなる研究活動のきっかけとなるであろう。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
泰羅 雅登 | 日本大学 | 大学院総合科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】3,800千円 (直接経費: 3,800千円)