老人性痴呆および老年期うつ病の認知機能と運転能力の評価
【研究分野】精神神経科学
【研究キーワード】
Driving / Alzheimer's disease / depression / Attention / dementia / neuropsychology / Working memory / cognitive function / 自動車運転 / アルツハイマー病 / うつ病 / 注意 / 痴呆 / 神経心理学 / 作動記憶 / 認知機能
【研究成果の概要】
【目的】老人性痴呆および老年期うつ病の患者に関して、種々の神経心理検査バッテリーによる認知機能評価と、運転シュミレータを用いた運転能力評価の関連を検討する。【方法】平成12年度はまず、神経心理検査バッテリーの作成、簡易運転シュミレータ(タスクネット社AC110)の設置と作動環境の整備を行った。神経心理検査バッテリーは注意・記憶・知能・前頭葉機能を評価できる課題を選定し、AC110では、ハンドルとブレーキ・アクセルの操作に関する4課題を設定した。検査は平成12年9月から平成13年12月まで実施し、最終エントリー患者数は軽症痴呆例11例、老年期うつ病の患者16例、他の脳損傷11例であった。臨床症状の評価とともに、運転歴の聴取、画像検査(頭部MRIおよび脳SPECT)も行なった。【結果】軽症痴呆例に関しては、AC110の各項目を同年代健常者のデータベースと比較し、5段階で評価した。(1).単純反応、(2).選択反応の正確さ・スピード、(3).ハンドル操作の正確さ・遅れ・安定性のいずれの課題でも成績低下が見られた。実際の運転安全性との関連からはスピードよりも正確さが重要と思われ、ことにハンドルとブレーキ・アクセルの複合的操作の正確さが低い症例は要注意と考えられた。また、神経心理検査に関しては知能や記憶は運転能力を直接的には反映していない一方、前頭葉機能検査は運転シミュレータの成績とある程度の相関を示した。運転能力を最も反映する可能性があると考えられたのはストループ課題であった。また、老年期うつ病に関しても、同様の運転シミュレータと神経心理検査との関連が示唆された。【まとめ】軽症痴呆例、老年期うつ病例のいずれにおいても、運転シミュレータの複合的操作の正確さが低い症例は要注意と考えられ、また運転シミュレータの成績は前頭葉機能検査の成績と関連していると考えられた。
【研究代表者】