雇用の質を考慮した地域・企業規模間等の定量的な雇用の波及過程と効果の研究
【研究キーワード】
雇用創出 / 波及効果 / テレワーク / 正規雇用 / 地方 / 大企業 / 集積 / IT産業 / 非正規雇用 / 生産性 / 女性
【研究成果の概要】
本研究は雇用創出過程および波及の検証を目標としている。2021年度は、2020年4月に新型コロナウイルス感染症による第1回目の緊急事態宣言が出され経済活動が抑制されたことを受け、地域雇用にどのような影響があり、波及しているかを中心に分析した。
第1回目緊急事態宣言時には在宅勤務が急速に浸透した。そこで、第1に、企業が求人を出す場所を変えているかを観測した。第2に、求人場所に変化が起こる要因について分析した。その結果、特にパートタイムの求人場所が郊外化していた。また、求人場所の郊外化は小売り業で明確にみられ、反対に情報サービス産業では観察されなかった。新型コロナウイルス感染症による求人数の変化は、感染者数や人流、緊急事態宣言の有無をコントロールしても地域により差がみられた。
求人場所に差が出る要因を分析すると、産業の多様性は第1回緊急事態宣言から1年後の求人数に正の影響を与えていた。反対に、産業の特化は負の影響を与えていた。また、財政の硬直性は、柔軟に支援策を打ち出せなかったためか、コロナショック直後のパートタイム労働の求人数を減少させていた。但し、財政による効果は時間の経過とともに薄れていた。2015年時点での失業率も地域の求人数に負の影響を及ぼしており、先行研究の地域への影響の永続性が日本でも観察された。人的資源の影響はデータの限界もあり明確な効果は得られなかった。
上記分析とは別に、職業ごとの在宅勤務の可能性と将来の機械化確率の間に負の相関関係があることを見出し、安価な労働力と機械化との代替関係について考察し、同一産業でも機械化が遅れていた企業ほど新型コロナウイルス感染症蔓延後の売り上げ減少が大きいことを明らかにした。また、別の分析として、大企業の支社・支所および本社が地域の雇用量等に与える影響について分析した。これらをもとに今後はさらに波及経路の解明に取り組みたい。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
遠藤 正寛 | 慶應義塾大学 | 商学部(三田) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)