デルタ危機と水害レジリエンス:自然環境、インフラ、社会経済構造の多次元分析モデル
【研究キーワード】
水災害 / レジリエンス / アジア / 学際 / デルタ都市 / 学祭 / 水害
【研究成果の概要】
2019年の研究実績に関して、研究対象地ごとに記載する。
タイにおいては洪水レジリエンスについての研究を継続し、2011年の大洪水の影響を受けたコミュニティやその後に洪水対策が強化された地域、河川沿いの視察、洪水対策としてスラム移転政策を進める実施機関(管轄機関など)および2011年の大洪水時に政策設計に携わった行政官や、その後の洪水対策の設計・指揮に当たる行政官へのインタビュー調査を実施した。また水文モデルなどの自然環境に関するシミュレーション・モデルと社会および政策とのインターフェイスについての調査研究を行った。そこでは、モデルに基づく政策提言が、社会に採用されにくい問題があることを明らかにするとともに、その背後にはモデルの開発過程へのステークホルダーの参加の阻害という問題があることを見出した。さらに、このようなステークホルダーの参加をめぐる問題は、人工物のデザインをめぐって一般的にみられる現象であること、その解決にあたって利用可能な研究蓄積が他分野に存在していることを確認した。
ミャンマーにおいては、ヤンゴン都市圏における世帯訪問調査で得られたデータベースを用いて、世帯レベルでの社会的脆弱性を定量化できる指標を抽出した。その指標を元に総合指標を構築し、世帯の社会的脆弱性の空間的分布を分析し、災害の曝露の度合や将来のリスクとの関係を明らかにした。また、総合指標の構築に対して方法論的な観点から検討した。
日本国内においては、気候モデルの大規模アンサンブル実験結果と河川氾濫モデルを使用して,複数の海面水温変化シナリオを考慮しながら日本全域で将来の洪水リスクの変化を推定した。その結果、日本の多くの地域で極端な流量が頻発化し、人口減少を考えても曝露人口はほぼ維持されるという結果が示された。
【研究代表者】