新興科学技術と現代アートの相互関係に関する科学技術社会学的研究
【研究キーワード】
現代アート / 科学技術社会学 / STS / artistic research / インフラストラクチャ / 保全 / アート / 美術 / 市場
【研究成果の概要】
本年度は研究の初年度でもあり、科学技術の諸相とアート表現活動が交錯するいくつかのフェーズ、すなわち実際の表現活動の核に関する部分と、それを維持、補修するようなインフラ的な活動の部分に分け、前半の実際の表現活動における科学技術の利用についての包括的マッピングをおこなった。その内容として ①商業的に活躍する若手画家の所属画廊とその傾向分析(例えば伝統絵画系か、テクノアート系か) ②教育現場におけるこうした先端テクノロジーの使用を唱導する教育機関の分布と内容分析 ③特に欧米を中心としてアート活動とより一般的な科学技術、さらには学術的な活動の接近を示すartistic researchと総称される活動のレビュー等である。
新興テクノロジーをアートに応用する場合、特にその作品をどのように市場に展開するのか、あるいはその維持、保全はどうするのかという様々な問題が出てくるが、特に①をみると、画廊ごとにかなり分野による棲み分けがあり、新規の表現をどのように市場にくみこんでいくかについては、現状ではかなり試行錯誤の面が強いという点が明らかになりつつある。他方、特に②③については、特に欧米の教育現場を中心に、アート活動を他の学術活動と同様なものとして扱おうとする、教育行政を巻き込んだ一種の運動があり、批判も含めてかなり広範囲な論争を巻き起こしている。このことはアートと科学技術を中心とした活動の融合への傾向を示すと同時に、特に評価面において、アート活動が科学をモデルにした論文査読のような体系の中に取り込まれるリスクもあることが明らかになりつつある。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)