ノーベル賞選考資料を用いた日本の科学研究への国内外の評価の変遷に関する調査
【研究キーワード】
科学論 / 伝染病 / 細菌学 / 人工癌 / 物性物理学 / 綜合科学 / マルクス主義 / 聖断 / 日本科学 / 篠原雄 / 純粋科学 / 基礎研究 / 長岡半太郎 / 湯川秀樹 / 廣重徹 / ノーベル賞 / 素粒子論 / 癌研究
【研究成果の概要】
2020年度に続き、2021年度も、外国への出張や所属機関以外の国内の資料館等での資料調査は困難な状況が続いたため、収集済、或いは所属機関を通して利用可能な資料を用いた研究を中心に計画を実施し、主として日本国内の戦前期の科学全般をめぐる情勢の分析と、研究書等の検討をもとにした国際比較などを行った。
戦前期の科学とノーベル賞の関わりについては、生理学・医学関連の状況を、北里柴三郎、野口英世、山極勝三郎の三例を中心に分析した論文を作成し、現在投稿中である。また、明治期より日本の医学研究の重要な拠点であった研究所の後継機関が廃棄を決定した雑誌のうち、蔵書印に、内閣文庫や東京及び大阪の痘苗製造所のものなどを含む、来歴から見て重要と思われるもの約1000冊について、目録を作成し、保管体制を確保した。この資料については今後の研究において活用する予定である。
また、ノーベル賞に関する事情とは直接かかわりはないものの、この課題を探求するうえでの前提となる知識を確認するため、戦前期の日本における科学観の変遷についての論文を作成した。特定の時期の日本の科学観は、その時点までの日本の科学の発展の状況をも反映して展開することが多い。そこには、ノーベル賞のような明確な指標への意識も読み取ることができる。賞への意識が直接的には現れにくい科学研究の場面を離れて、科学観・科学論に注目することで、ノーベル賞への意識を理解する途が開けうることが確認された。
さらに、日本の有力な物性物理学者であった久保亮五に関する展示において、所属教育機関であった第一高等学校の資料などを用いた部分に関して協力し、戦前期の科学者育成の特徴の一端を明らかにした。
なお、国外での調査は行えず、国内での調査にも困難があったため、研究全体の方向性を再検討したうえで、更に次年度も当該研究を継続することとした。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)