二十世紀フランス文学における散文の研究──経験とその表現
【研究キーワード】
文学 / 人文知 / フィクション論 / フィールドワーク / 無意識 / フィクション / 現象学 / イメージ論 / 精神分析 / フランス20世紀文学 / 散文 / 文学と人文科学 / 経験 / 表現
【研究成果の概要】
二十世紀、小説・抒情詩・演劇という文学の主要カテゴリーは解体されていったが、書くという行為そのものは衰えなかった。この時代の作家たちは、精神分析、人類学、言語学等の新たな人間認識をもたらした学問を積極的に吸収し、さらに身体論やイメージ論等、哲学、社会学、美術史学等のさまざまな学問領域で検討された問題意識を共有し、相互に影響を与えながら執筆活動を行った。どのような視点から見れば、作家と思想家・哲学者等の区別を取り払い、この時代の文学を綜合的に把握することができるのだろうか。さまざまな領域の研究者と対話することで、文学と人文知という一見異なった思考スタイルの境界に何があるのかを探った。
【研究の社会的意義】
研究を進めた結果、現実と虚構のせめぎあいが、文学と人文学を綜合する地平線を考えるうえで重要だという認識に達した。捉えようとする現実と、現実に迫るための方法(虚構)がいかに多様な形を取り得るのか──この視点を獲得したことで、二十世紀文学を捉えなおすひとつの基礎を築くことができた。小説・抒情詩・演劇という従来のカテゴリーによらず、精神分析、人類学、言語学等の人文科学の重要作品を視野に収めた文学史はまだ書かれていない。そのような文学史の展望が得られれば、この時代、文学に起こった地殻変動への認識を広く社会に訴えることができるだろう。今回は、そのような文学史再構築のための大きな手がかりを得た。
【研究代表者】