数学の文化的視野覚醒と新文化創出のための教材・指導法開発研究
【研究分野】科学教育
【研究キーワード】
数学 / 教育課程 / 数学史 / 道具 / 解釈学 / 数学観 / 理解 / 教材・教具 / マルチメディア / 原典 / 文化 / 授業研究 / 教材開発 / 動画 / デカルト / 比較文化 / インターネット / コミュニケーション / 作図ツール / アポロニウス / パピルス
【研究成果の概要】
当初の計画に従って、数学の文化的視野の覚醒のために3年間に渡り、40件を超える数学史原典を利用した教材の開発を進め、その実践的検証を行った。その成果は、30件を超える学会発表がなされ、海外からの招待講演を2件、国際会議のオーガナイザとして公開するとともに、web上でも公開した。
各事例は、何かを知ること、著者(相手、書き手、発言者)の立場を想定して何故かをしること、現在の自分と比較して相違を知ること、以上の3つを仮説的・対話的に確認していくことによる解釈学的営みを、生徒が、数学史原典(含む、英訳・和訳)を手に行うものであり、それぞれに、そのためのテキストが作成されている。異文化体験とは、テキスト解釈を通じて、現在の自分が知る数学とは異なる数学的世界の存在を知る体験、「こんな数学もあったのか体験」を指し、数学の文化的視野の覚醒とは、その体験を通じて、もう一つの数学世界で生きた人間とその文化的営みを認めることであり、その覚醒から、自分自身の数学体験を振り返ることである。
40件を超える事例それぞれにおいて、数学の文化的視野を覚醒し、自らの数学文化の創出への意欲を得た生徒の姿を認めることができた。
特に平成15年度、平成16年度には、別の研究で得た数学史上の道具を活用して、原典から作成したテキストに限定することなく数学の異文化体験をすることも検討した。
すべての事例は、3時間の授業時間枠を想定し、該当内容を学んでおり、新たな学習内容の指導を行わない。通常の数学史利用は、内容を学ぶ際の補助として利用されたり、学んだ後のお話として活用されたりするわけだが、本事例は、すべて、自分の知っている数学を、全く別の内容に思える数学テキストを読むことで学びなおす意味での、数学的な問題解決活動を内包しており、その学びなおしによって、数学を文化として認め、自らが数学文化の創出者となることを実現している。
【研究代表者】