科学的および文化史的感覚研究を援用した英文学・文化感覚史
【研究分野】ヨーロッパ語系文学
【研究キーワード】
感覚 / 英文学・文化 / メディア / 聴覚 / 触覚 / 声と口 / 運動感覚 / リズム / 英文学 / 英文化 / 口(くち) / セクシュアリティ / テクノロジー / 文学 / イギリス / 声
【研究成果の概要】
本研究は、欧米で盛んになってきていた感覚文化史研究に刺激を得、またスティーブン・コナーが「文化現象学」と呼ぶ鋭敏な感性的読解を先端科学の成果と文化研究に結びつけたアプローチにヒントを得て、「感覚」を軸として、「科学的」そして「文化史的」方法を合体させることを試みた。
より具体的には、西洋近代をスペクタクル化の時代とする基本的な認識の下、聴覚と運動感覚(≒リズム感覚)を中心に「感覚」テーマを文学研究に挿入することにより,英文学・文化史の読み替えを試みた。感覚とメディア、聴覚とメディア、口と耳のオーラリティ、運動感覚、リズム感覚等の問題が考察された。ブラム・ストーカーの古典ホラー小説『ドラキュラ』に見られる口と聴覚の問題に焦点を当てて、メディア、セクシュアリティ、イギリスとアイルランド史の問題に繋げた研究(『「ドラキュラ」からブンガク』)、文学者J・B・プリーストリーが映画脚本や世界初の「ラジオ小説」で「歌」テーマを前景化したり、彼のラジオ放送の声がイギリス文化に大きな影響を与えた経緯の分析(「しゃべる流行作家、歌う共同体」など)、D・H・ロレンス『チャタレー夫人の恋人』の翻訳と解説を通じで、戦争文化と感覚、メディアと感覚の問題を考察したもの(D・H・ロレンス『チャタレー夫人の恋人』)、プリーストリーやロレンスを通じて、ジョージ・オーウェルの文学とメディア論を分析したもの('Wireless Voice in Lady Chatterley's Lover')、リズム感覚を軸として20世紀イギリス文化史を見直そうとしたもの(『運動+(反)成長--身体医文化論II』、『身体医文化論III--腐敗と再生』、D.H.Lawrence : Literature, History, Culture)、科学と感性の対話と結合を基本理念として編集した著書(『生命の教養学へ--科学・感性・歴史』)など、内容は多岐にわたる。感覚を軸として、英文学・文化史を見直してみると、文学・文化史の枠内でまだまだ面白いテーマが眠っていることが分かるとともに、文学・文化研究と(例えば)政治史研究の狭間にも豊かな可能性を有する領域のあることが判明する。現在、本計画の成果に基づいて、感覚研究の成果を取り入れた新しいイギリス文化史の教科書を執筆中である。今後は教科書という形で成果を幅広く発信してゆく予定である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2005
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)