機関投資家の運用スタイルとモニタリング活動内容およびその効果の実証分析
【研究キーワード】
機関投資家 / エンゲージメント / モニタリング / フリーライダー問題 / ESG
【研究成果の概要】
本年度は、機関投資家のエンゲージメント活動の実態と、その投資先企業に対する効果を明らかにする研究について特に集中して検証を進め、さらに論文作成を行った。具体的には複数の大手機関投資家よりエンゲージメント活動の詳細データの提供を受け、外部からは公開データでは観測できない機関投資家のエンゲージメントを変数として採用し、対象企業および対象課題の選択、そのコーポレートガバナンスおよびESG活動全般への効果を検証した。その結果、分散投資家である機関投資家のフリーライダー問題が緩和される環境下において特定の対象企業へのエンゲージメント活動が実施されること、エンゲージメントは対象企業のガバナンスとパフォーマンスを改善するとの結果を得た。この検証結果を論文にまとめ、2022年6月にRIETI DPとして公開し、これを英語論文化して2022年3月のJFA-PBFJ Special Issue Conferenceで報告し、同カンファレンスのBest Paper Awardとして表彰された。
また、同様に機関投資家の環境および社会的側面に関するエンゲージメント活動が、ターゲット企業のESG行動に与える効果の検証も進めた。この結果については初期的分析結果を2021年度日本ファイナンス学会秋季研究大会で報告した。
また、機関投資家の投資対象企業へのモニタリング行動の国内外の研究動向のまとめと申請者自身のこれまでの研究結果のまとめを行い、日本ファイナンス学会2021年大会において、会長講演「株式所有構造と企業統治: 我々はどこから来たのか、どこへ行くのか」として講演した。
また、機関投資家と企業との対話が企業の事業再編活動による事業ポートフォリオ最適化につながることのエビデンスベースの論考を、日本経済新聞朝刊の経済教室「視界不良下の経営:事業再編へ投資家と対話を」として掲載した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)