教育労働とは何か? -<労働>概念を用いた多忙の分析ー
【研究キーワード】
教師 / workload / 多忙化 / 教育改革 / アカウンタビリティ / マーキング / 専門職 / 自律性 / 過重労働 / 多忙 / 労働過程 / 勤務環境 / intensification / 感情労働 / turnover(離職) / 教師の仕事 / 教育労働 / 労働関係 / 新自由主義
【研究成果の概要】
コロナの終息が見えないことから、予定していた研究(国内・国外のフィールドワーク。主としてエスノグラフィー)はほとんど実施できず、文献研究やZOOMを通じての簡単なインタビューの実施にとどまった。
研究については、前年度からの進展が見込まれなかったため、本年度はそれまでのフィールドワークや文献で明らかになったことを、ひとまずまとめることに費やし、3本の論文を執筆した。そのうち1本は、渡英した折に調査に多大な協力をしていただいた英国の研究者の呼びかけによるものであった。
教師の労働荷重は、アングロサクソン系の国では共通した傾向がみられる。新自由主義的教育改革によって、アカウンタビリティが強く求められることにより、教師が日々の活動の中で気を遣う(intensification)領域が大きく変わったことや、それまでと同じ活動であっても、意味付けが異なってきたことによるものが多かった。英国の小学校の例では、教師は、授業をした後、子どもたちのノートを読み、コメントを入れて返却する(マーキング)個別指導に近い指導を常としているのだが、このマーキングが「教師がどれだけ一生懸命に指導しているか」のエビデンスとして用いられるようになったことから、その作業が、当該の子どもに対してだけではなく、他者(評価者)に見られることを意識して行われるようになり、負担が増している、などの例が挙げられる。同時に、子どもの多様化(移民など外国籍の子供の増加、特別な支援をする子供の増加)が、教師の仕事を増やしている。
イギリスのデータ収集をさらに強化するとともに、こうしたアングロサクソン系の「教師の労働過重・多忙化」と、日本の状況のどこが同じでどこが異なるのか、この点を明らかにすることが課題として残っている。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)