子どもの「教科内容の本質的理解」を促す授業デザインに関する心理学的研究
【研究キーワード】
本質的理解 / 授業デザイン / 学習過程 / 追究型発問 / 学習観 / 協同解決 / 探究 / 教科学習 / 概念的理解 / 非定型問題 / 思考 / 多様性 / 教育心理学 / 実験的研究 / 実践的研究 / 発問
【研究成果の概要】
本研究では,各児童・生徒の「教科内容の本質的理解」を促す授業デザインについて,①小学生~高校生を対象とした実験的研究(個別実験,協同解決実験,集団調査等)と②小学校・中学校・高校の授業場面を対象とした実践的研究により心理学的に明らかにすることを目的とする。
①非定型問題の設定が教科内容の本質的理解に及ぼす効果の検討(実験的研究)
生徒の協同探究を通じた本質的理解の深まりを検討する予備的研究として,大学生を対象に数学科図形領域の非定型問題に関するオンライン協同解決実験を進めている。これまでに,協同で複数の課題の共通点を探り包括的原理を話し合うことで,各個人の本質的理解が深まることが示唆されている。また学生・社会人を対象とした質問紙調査により,非定型問題に取り組む際に批判的思考態度が高い者は授業内容を自分でまとめる意欲が高いことなどが示唆された。
②非定型問題の設定が教科内容の本質的理解に及ぼす効果の検討(実践的研究)
非定型問題の設定とそれに対する個別・協同探究を特徴とする各教科の授業を各校教員と協同で組織し,どのようなタイプの非定型問題が児童・生徒の思考の多様性の拡大や概念的理解の深化(本質的理解)に有効かを検討した。具体的には,1)中学校社会科(地理的分野:アフリカ州),2)中学校数学科(資料の活用:代表値),3)小学校算数科(図形領域:箱の形)において上記の特質を有する授業を組織し,授業時に実施された非定型問題(導入・展開問題)に対する各児童・生徒のワークシートの記述内容を分析した結果,1)地域の発展可能性を自然,産業,人口などから多面的に考える,2)日常的文脈でどのような代表値への着目が妥当かを考える,3)複数の立体の共通点と差異点を考えるといった非定型問題によって多様な思考が引き出され,それらを関連づけることで各児童・生徒の概念的理解が深まる可能性が示唆された。
【研究代表者】