授業における教師の知識の機能に関する実証研究-教師教育の視点から-
【研究分野】教育工学
【研究キーワード】
教師教育 / 教師の知識 / 教師の成長 / 教師の信念 / 教授行動 / 授業リフレクション / 教師の特性 / 授業分析 / 授業シミュレーション
【研究成果の概要】
授業の実施過程における5人の教師の思考内容を、授業リフレクション(授業者の授業時の内観報告)による「教育的意味単位」によって記述した。11の分析カテゴリーによる分析の結果、児童の思考や行動の予想や予測、過去の児童に対する再認識、授業中の教師の感情などが、児童の思考や行動を受け入れて授業を展開するか、教師の予定や計画をに合わせて展開するかを規定することがわかった。(藤岡)
授業観察にカード構造化法を適用することによって、信念に基づいて観察する、距離をおいて客観的に観察する、授業に即して観察する、授業に即しかつ対象化して観察するなど、授業観察の際の知識構造の個人差を抽出することができた。(藤岡)
初任者教師の成長過程を教室情報の解釈の変容で調べたところ、経験者教師が客観的に授業状況を判断しているのに対して、初任教師は、学級の眼前の問題を反映した状況判断を行っている傾向がみられた。また初期においては教師の注意が授業への参加といった学級運営上の問題に集中し、年度の後半になると教師自身あるいは指導法に注意が向くようになることがわかった。(浅田)
教師の信念(児童観、授業観、学級観、指導観、学力観)と教授行動の関連を社会科で調べたところ、教師は信念としては、意欲・自主性などの情意領域、思考力や問題解決能力などの高次の認知能力、協調性を重視していることがわかった。しかしそれは必ずしも授業内容として具体化されていない。また、授業場面における教師行動が、子どもや、学級や、授業についての考え方に影響を受けていることが、示唆された。(浅田)
コンピュータの利用した学習活動における、教師の知識の影響を参与観察、調査紙、ビデオとコンピュータを利用したリフレクション記録等で分析した結果、(1)子どもの自発性を重視した学習活動のセッティングにおいて、教師の特性が子どもの活動の方向や内容に影響を与える(2)全体的な状況の把握に際して教師の教育観や個々の子どもに関する知識、コンピュータに関する知識が二次的に影響を与えることがわかった。(大島)
【研究代表者】