理工系高等教育における職業倫理育成に関する総合的研究
【研究分野】科学教育
【研究キーワード】
工学倫理 / エンジニアリング・エシックス / 科学技術者の社会的責任 / 工学教育 / 職能倫理 / ケース・メソッド / モーラル・オートノミ / 倫理綱領 / モ-ラル・オートノミ / 理工系教育 / 科学者の社会的役割 / エシックス / シラバス / 大学教育 / インターネット
【研究成果の概要】
本研究は平成6年度および平成7年度の二年間に渡って実施された。この研究期間に、研究代表者は、特に米国における工学倫理教育の現状について、文献調査およびインターネットを使った調査を行った。その結果、次のような成果が得られた。
1) 米国の工学系高等教育カリキュラムがABET(Accreditation Board for Engineering and Technology)より認可を受けるためには、工学倫理に関する教育を教育課程に含むことが義務付けられている。
2) そのため、ほとんどの工学系の大学では、工学倫理(職能倫理)教育が行われている。
3) 約20のシラバスを分析した結果、各大学での教育内容は異なるが、4〜5冊の非常によく使われている教科書があり、共通して取り扱われる項目もあることがわかった。これらの項目は、「工学とプロフェッショナリズム」、「工学系専門学会と倫理綱領」、「工学者が一般大衆に対して持つ責任」、「企業人としての工学者/工学者と雇用者の関係」、「利害の対立」、「内部告発」などである。
4) 教育方法として最も一般的なのは、工学者としてジレンマを感じるような、実際の、あるいは架空の事例を学生に提示し、学生が自らその問題に対しての解決策を考えるという所謂「ケース・メソッド(事例研究法)」である。
5) ここで、学習目標は、一定の倫理規範を学生に教え込むことではなく、学生が自ら自律的に倫理的問題の存在を見いだし、自分なりの対応策を見いだすことができるようになること、つまり、「モーラル・オートノミー(moral autonomy)」を確立することである。
6) 一方、日本ではこのような教育はほとんど行われておらず、多くの人々がその必要性を認識している。ただし、米国と日本との文化的風土の違いを考慮して、日本独自の「工学倫理問題」に関するさまざまな事例を収集することが必要であることが明らかになった。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1994 - 1995
【配分額】1,900千円 (直接経費: 1,900千円)