公共サービスをめぐる紛争の解決モデル:ラテンアメリカを事例として
【研究キーワード】
公共サービス / 社会運動 / 水資源 / ラテンアメリカ / 紛争 / フィールドワーク / シミュレーション
【研究成果の概要】
今年度(2年目)は、現地調査、水資源データベースの分析、ネットワークモデルの解析などにより、公共サービス(特に水道事業)をめぐる紛争がどのように生じるのか複眼的に研究を進めた。第一に、ボリビア東部サンタクルス県を中心に2ヶ月間の調査を行い、極めて優れた水道協同組合がなぜサンタクルス県のみで機能しているのか、水道協同組合のリーダーにインタビューを実施した。その結果、サンタクルス県の経済発展の歴史、それに伴う経済的エリートの誕生、彼らの地理的アイデンティティーがサンタクルス県における独自の水道協同組合設立に重要な影響を与えていることが明らかとなった。第二に、より一般的に水インフラをめぐる紛争のメカニズムについての実証的なパターンを把握するために、DHSデータセットから得られた水アクセスの指標と、Geo EPR、MERIT Hydroの各データベースから得られた民族構成及び物理的水資源の存在の関係について調査し、複雑な民族構成が水アクセス指標に負の影響を与えうる(ペルーの例)ことを示した。ただし、この影響はどの国でも一般にみられる傾向ではなかったため、水道事業供給の体制等の相違を踏まえた分析を行う必要がある。第三に、紛争をかかえたアクター間の関係性のダイナミクスについて理論的な立場から仮説を構築するために、符号付きネットワークの時間発展モデルである間接互恵モデルを計算機シミュレーションや平均場近似などの手法で分析した。その結果、ネットワーク密度による構造バランスの相転移が発見され、紛争における二極対立の発生がアクター間の関係性の密度に依存する可能性が明らかになった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
森川 想 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 講師 | (Kakenデータベース) |
和田 毅 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
牧田 裕美 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 特任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)