経済金融工学的アプローチによる不動産価格形成メカニズムの研究
【研究分野】経済理論
【研究キーワード】
期待形成 / バブル期 / 住宅需要 / mixed logit model / 不動産開発 / リアルオプション / 最適開発タイミング / ブラウン運動 / ミクロデータ / 最適土地開発問題 / バブル経済 / 合理的期待
【研究成果の概要】
首都圏の新築マンションのマクロ統計データを用いて、バブル期からバブル崩壊の過程で人々の期待がどのように変化してきたかを定式化し、価格形成メカニズムの実証分析をおこなった。また、資産運用物件データに関して、ヘドニック価格関数を推定しインデックスを作成後、情報効率性の検定と可変リスクプレミアムの推計をおこなった。(中村)
日本とドイツの住宅需要の国際比較を、ミクロ計量経済学的手法に基づいて行った。具体的には、mixed logit modelを用いて、両国間の相違を、選好と社会人口学的特性の相違に分離して分析した。また、わが国の住宅市場の特徴と問題点を探り、現行の不動産税制が住宅市場に与えている影響を明らかにすることによって今後の住宅・土地政策の方向性を探った。(瀬古)
リアルオプション・アプローチにより、不動産土地開発事業、ビルの建て替え事業、および再開発事業などを評価し、賃料キャッシュフローおよび不動産価格のキャピタルゲインのリスク分析を可能にする分析的な枠組みを不動産金融工学的な視点から与えた。特に、不動産開発における開発タイミング、工期短縮、売却タイミングをリアルオプションのモデルを与えた。これにより、不動産開発事業におけるキャピタルゲインがStagingの複合リアルオプションとして捉えることが可能となった。次に、不動産証券のヘッジングと価格評価の一般モデルを開発した。不動産市場、空間市場(賃貸市場)のリスクを証券市場に持ち込むことで既存の市場モデルを拡張し、不動産の価格や賃料の上に書いた派生証券(不動産証券)の新しい価格評価モデルを開発した。(川口)
ある種の最適投資問題は、応用確率解析の分野で研究されてきた「最適停止問題」に帰着することができる。今年度は、状態変数が幾何ブラウン運動に従う場合の、解の存在条件を導出した。導出された条件は、確実性下における通常の「二階の条件式」の自然な拡張になっており、「不確実性の増加は投資を遅らせる」という近年の投資理論におけるよく知られた結果に対し、本質的な関係にあることが明らかになった。また、これらの結果を、Clarke and Reed(1988)タイプの最適土地開発モデルに応用し、厳密性と一般性を与えた。(高塚)
【研究代表者】