マルチハザードマップを活用した巨大都市の防災都市空間の最適化設計方法の開発
【研究分野】社会システム工学・安全システム
【研究キーワード】
自然災害 / 防災 / 減災 / ハザードマップ / 火災 / シミュレーション / GIS / 都市環境 / 災害 / マルチハザード / 巨大都市 / 都市空間の最適化 / 災害アーカイブス / 3次元GIS
【研究成果の概要】
本研究では,マルチハザードマップを活用した巨大都市の防災都市空間の最適設計方法の開発を行った.最終的な成果は,(1)様々な災害の物理・化学現象を適切に捉えたシミュレーションモデルの開発と被害結果が社会に及ぼす影響の大きさの評価(災害シミュレーション),(2)過去の大規模災害の事例およびシミュレーション結果のデータベース化(災害アーカイブス),(3)(1),(2)の結果を3次元GIS上に統合することにより,任意の時空間上での災害の状況をバーチャル体験できるシステムの開発(3次元GIS),(4)マルチハザードを考慮した場合の,適切な都市空間の創造方法の提案(都市空間の最適設計)という4つから構成される.災害シミュレーションに関しては,地震災害,ヒートアイランド,火災.大気汚染・施設劣化という4種類のシミュレーションモデルを開発した.これらをそれぞれケーススタディーエリアに適用し,モデルの妥当性と効果の検証を行った.
災害アーカイブスについては、過去の災害で発生した事象、対応活動や教訓などを、発災からの経過時間や空間、対象者の組織や立場など、様々な角度から検索し分析できる災害情報のデータアーカイブを開発した。この災害情報アーカイブスは、種々の物理・社会現象に関する最新のシミュレーションモデルとデータベースの組合せにより、ただ単に過去の危機管理事例を収集・整理するだけでなく、異なる発災時刻、自然条件、地域の防災力、社会情勢のもとでの危機発生状況をシミュレートし、それを「擬似危機事例」として蓄積・更新していくことを可能とする。「擬似危機事例」を量産し、教材として用いることで、実際の危機事例の稀少性を補完し、危機に対するイマジネーション能力を高めることが可能となる。さらに東京23区を対象とした地域危険度マップシステムを開発し,市民が適切な防災対策を行うための環境整備を行った.この際,特別な技術を持たない一般市民(高齢者・子供も含め)も容易に操作できるユーザーフレンドリーなインターフェースの構築に配慮した.また,同様の技術を用いて,トルコ共和国イスタンブール地域を対象とした3次元マップシステムも開発し,これを活用した都市空間の最適設計のためのワークショップを提案した.現地における日本人学生とトルコ人学生によるワークショップでは,このマップシステムを利用した議論および最適設計の可視化が行われた.
本システムは,3次元空間情報を用いて災害に関する情報を可視化することにより,利用者の災害イメージ能力,現状理解力,対応力が向上し,災害に強い都市形成を目指す上で極めて有効なツールとなると考えられた.
【研究代表者】