危険回避能力の深部脳機能ネットワーク仮説の提案と検証
【研究キーワード】
認知制御 / 刺激反応適合性 / 身体性認知 / 背側前部帯状回 / 危険回避 / 自動車運転 / 事故 / 高齢者 / 認知機能 / 刺激競合適合効果 / サイモン課題 / 脳波 / 深部脳活動 / 刺激競合課題 / 学習 / 適応 / 事象関連電位 / 認知症 / 危機回避 / 深部脳機能
【研究成果の概要】
本研究は、自動車運転における危機回避能力の神経基盤を明らかにし、高齢者の安全運転に資する技術を創製することを目的とした。本年度は、左または右の文字が刻印された刺激に対して文字の指示に従った足でステップを行うサイモン課題遂行中の脳活動の詳細を検討した結果、抹消の運動器の活動が中枢の認知制御の基盤となり得ることを明らかにした。この結果は、認知機能低下が中枢のみならず抹消の運動器・感覚器の衰弱にも起因し得ることを初めて示唆するものであり、中枢のみならず抹消に着目することで高齢者の認知機能低下防止策を実現する新たな糸口が見出された。
サイモン課題では、不整合刺激に対する刺激反応競合の解消が認知負荷となり誤反応につながると考えられていた。この従来の知見を覆し、刺激の空間特徴から誘導される誤反応を自動的に反転する機構が存在することをこれまで見出してきたが、背景にある神経科学基盤は不明であった。そこで加速度による運動ダイナミクスと事象関連電位により反転機構を詳細検討した結果、整合・不整合を刺激後200msで認知して正反応を表出することを見出した。さらに深部脳活動度および筋電図から、この整合・不整合認知は、体性感覚を利用する身体性認知機構を基盤とするものであると結論付けた。また、タスク遂行は左右の文字の認識ではなく整合不整合に基づき初期姿勢の反転・非反転を決める簡便なルールに従うものであり、身体性認知機構がこの簡便なルールの発現に貢献しているとの見解に達した。
以上得られた知見を基に、背側前部帯状回、補足運動野並びに感覚運動皮質を背側前部帯状回が統合して運動を制御する脳機能ネットワークモデルを考案するに至った。この脳機能ネットワークは身体性認知機構に基づくことから、高齢者の認知機能低下は中枢の神経変性のみならず抹消からの感覚入力の減退も一因であることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
光吉 俊二 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)