計算・実験科学の融合による有効ハミルトニアン構築と強相関トポロジカル物質への応用
【研究キーワード】
強相関電子系 / 機械学習 / 量子スピン液体 / ベイズ最適化 / トポロジカル物質 / ベイズ推定
【研究成果の概要】
本研究計画では、量子物質、特にトポロジカルな量子スピン液体と呼ばれる電子状態を実現するため、強相関電子系と呼ばれる、電子間のクーロン相互作用と原子間の電子のトンネリングの効果が拮抗する物質群を解析するための手法開発を行う。研究代表者らが開発を主導してきたオープンソース・アプリケーションHΦを量子多体シミュレータに用い、実験データを入力とし、理論あるいは第一原理電子状態計算に基づく有効ハミルトニアンを『事前知識』として、有効ハミルトニアンのベイズ推定を行うアルゴリズムの開発、およびHΦの拡張機能としての実装・公開を目指す。さらに、新物質開発を行う実験グループと有効ハミルトニアン推定手法の開発運用グループとの密連携によって、強相関トポロジカル物質の有効ハミルトニアンの決定と理論物質設計指針の策定を目的として研究を進める。
本年度は、第一原理計算に基づいて実験データから強相関物質の電子状態を記述する有効ハミルトニアンを決定するため、ベイズ最適化のためのオープンソースソフトウェア(PHYSBO)と量子格子模型計算ソフトウェアHΦの接続、ならびに大規模な量子格子模型計算のためのオープンソースソフトウェア(mVMC)のチューニングを行った。引き続き特異な量子もつれを示す量子スピン液体の候補物質として研究が進む強相関物質RuCl3の磁化データを用いた有効ハミルトニアンの決定ならびに接続ツール整備と公開作業を進めている。また、量子スピン液体候補物質RuCl3、RuBr3およびRuI3の電子状態を第一原理計算によって解析、並行してこれらキタエフ物質の物質合成、結晶構造決定および物性測定を行い、電子相関がハロゲンの原子番号が大きくなることで弱まることが明らかとなった。
【研究代表者】