ネットワーク環境における学術情報メディアの変容の実証的研究
【研究分野】情報システム学(含情報図書館学)
【研究キーワード】
学術情報 / 科学コミュニケーション / 電子メディア / インターネット / 電子雑誌 / 歴史学 / 経済学 / 学術雑誌 / e-print archive / 物理学 / ネットワーク / 情報検索 / データベース / 電子メール / 心理学 / 医学
【研究成果の概要】
本研究は、ネットワーク環境下に移行する中で、学術情報伝達メディアの役割の変容を明らかにしようとするものである。科学コミュニケーションのモデルを前提とし、さらには研究過程を含む学術研究全体におよぼす電子メディアの影響を明らかにする。自然科学、社会科学、人文科学の各分野に視野を広げ、電子メディア調査と面接調査に質問紙調査を組み合わせた手法を用い、具体例と全体像とを明らかにした。平成9年度には、方法の開発を行いつつ、心理学分野の調査を行った。平成10年度には、心理学の調査結果の分析を進める一方、物理学分野の調査を行った。また、電子メディアの中で特に重要である電子雑誌の実態を調査した。平成11年度には、物理学の調査結果の分析とともに、新たに人文科学として歴史学、社会科学として経済学における調査を行った。また電子雑誌の調査を継続した。
調査結果からは、大学ではインターネットの利用環境は比較的よく整備され、コンピュータや電子メディアの利用は浸透しつつあること、科学コミュニケーションの観点からするとフォーマルコミュニケーションよりもインフォーマルコミュニケーションにおいて電子メディア利用が進んでいることが明らかになった。物理学におけるe-print-archiveは、ネットワークとデータアーカイブ機能を用いた新しい学術情報伝達システムであるが、他の分野に広がるわけではなく、学術雑誌を中心とした既存の伝達システムに組み込まれていると言える。電子版のみの学術雑誌が成り立たない現状から見て、電子メディアは、学術情報の公的な伝達過程には大きな影響を与えたいと考えられる。しかし、研究過程における電子化は定着している。その利用態度について、経済学では、電子メールなどによる情報交換を重視する研究者とWWWによる情報検索と入手を重視する研究者とに分かれる傾向がみられた。
【研究代表者】