金属絶縁体転移周辺の異常な物理現象の理解とニューロモルフィック素子開発の協奏
【研究キーワード】
強誘電金属 / 超伝導 / SrTiO3 / ニューロモルフィック / レザバー / 強誘電体 / 強誘電量子臨界点 / リーク付き積分 / ニューラルネットワーク / 電界効果トランジスタ / 量子臨界点 / アトラクタ / チタン酸ストロンチウム / 近藤効果 / 人工ニューロン / 人工シナプス / 強誘電 / 金属絶縁体転移 / VO2
【研究成果の概要】
SrTiO3のSrをCaやBaで置換して強誘電体にした試料にTi/Nb置換でキャリアドープすると、SrTiO3関連の系では誰も観測したことのない0.75Kという高いTcを得ることができることを昨年度に発見しましたが、今年度はこの背景を探究し論文にまとめて投稿しました。キャリア濃度が小さくて誘電分極の遮蔽を十分に行えないと「強誘電体(空間反転対称性の破れた状態)の金属」になる可能性がありますが、X線による低温での精密な構造解析の実験をPFで行い、金属相でも確かに空間反転対称性が破れていることを明らかにしました。この系では電気抵抗が低温で上昇に転じるのですが、この異常が現れる温度(TK)をキャリア濃度に対してプロットすると、キャリア濃度をゼロにした極限で、TKが強誘電転移のキュリー温度に一致することがわかりました。TK以下の温度領域で反転対称性の破れた金属が出現するのだと仮定すると、TK=0となるキャリア濃度は広義の``量子臨界点''だと考えられます。我々はこの``量子臨界点''近傍で超伝導転移温度が最も増強されると考えていましたが、実はこの点の近傍での増強は小さく、むしろキャリア濃度が小さくなるほど増強が大きくなるという予想外のこともわかりました。このような興味深い物性を示すSrTiO3を用いた電界効果トランジスタ(FET)は、コンデンサなしでミリ秒以上の時定数を持つリーク付き積分動作をすることが昨年度までの研究でわかったので、今年度はこのSrTiO3 FET素子の動作を模倣する半導体集積回路をASICによって作製しました。大きな時定数を半導体回路で実現するというのは非常に困難でしたが、pseudo-resistorというアイデアを導入して克服できました。一方で、大きな電子回路をたったひとつの素子で実現できるというSrTiO3 FETのメリットを強調することにも繋がりました。
【研究代表者】