ライフサイクル成熟転換期の戦略形成プロセスと多国籍企業:アメリカ自動車産業の事例
【研究キーワード】
アメリカ自動車産業 / 国際経営 / FDI / スピルオーバー効果 / 通関統計 / アメリカ企業 / グローバル展開 / ライフサイクル / アメリカ / 自動車産業 / 戦略形成プロセス / イノベーション / 成熟・転換期 / 多国籍企業 / ケイパビリティ / フィールドワーク / 競争優位
【研究成果の概要】
本研究の2021年度の主たる研究実績は次の3点であった。第1に、理論的考察の深化である。本年度は現地調査が不可能だったため、国際経営論、FDI論における企業行動に関する研究を徹底的にサーベイし、その結果、本研究課題の理論的側面を強化することができた。特に本研究はサーベイ対象としてスピルオーバー効果に焦点を当てた。FDI論のスピルオーバー効果は享受する側が対価を支払うことなく無償で得られるものと先行研究は暗黙裡に想定した。しかし、実態は享受側は投資や学習を行っていることを本研究は指摘した。それゆえ、情報のスピルオーバー効果の創出側であるアメリカ自動車産業についても改めて考察が必要であることも明らかになった。
第2に、通関統計や生産販売に関するマクロデータからアメリカ自動車産業の外形的特質の整理を進めたことである。アメリカ自動車は学術のみならず報道でも取り上げられる一方、その実態解明は必ずしも進んでいない。通関統計は部品・材料の品目ごとの輸出入状況を明らかにし、特にアメリカはカナダ、メキシコといったNAFTA諸国とのつながりが深く、グローバル・バリューチェーンからアメリカ自動車産業の解明を進めた。貿易を巡る政治の動向が流動的であり、マクロデータによる実態解明は社会的にも求められているであろう。
第3に、アメリカ企業のグローバル展開先である中国やインドでの行動を解明した点である。コロナ禍以前に調査していた研究代表者の記録に基づき、アメリカ企業という点から再度検討を行い、アメリカ企業のグローバル展開における実態の一端を解明することができた。調達戦略や途上国の地場系企業との取引関係について、アメリカ企業には日本企業とは異なる特徴があった。そうしたアメリカ企業の特徴はアメリカ自動車産業に由来する経路依存的なものなのか、それとも合理性を有するものなのかを考察している段階にある。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)