幼児児童の私的日常世界に見る「自己と他者の理解」および「心の理論」の発達
【研究分野】教育・社会系心理学
【研究キーワード】
自己理解 / 他者理解 / 感情理解 / 感情制御 / 養育態度 / 愛着 / 情緒的雰囲気 / 関係性 / 心の理論 / 素朴人格理論 / 自己評価 / 幼児 / 児童
【研究成果の概要】
本研究は、自己および他者についての日常的な理解の構造、また人の心的世界やパーソナリティに関する素朴理論の発達的推移、さらにはそれらに影響を及ぼすであろう養育環境の諸要因を探索することを目的として企図されたものである。昨年度(平成9年度)は、保育園5歳児クラス、小学校2年生、4年生(計104名)を対象に自己および他者の様々な内的・外的側面に関する個別面接を行い、加齢に伴い、自他の身体的・外的属性に関する描出が減少する一方で、自他の行動および人格特性(特に自己と他者の協調的関係性)に関する描出が増加することを見出した。今年度(平成10年度)は前年度とはやや視点を変えて、自己と他者の特に感情に関する理解が、どのような環境的要因の影響下に発達するかについて検討した。ただし、今回は、将来的に幼児・児童に研究を拡張していく上での予備的研究という位置づけで、青年(大学生150名)を対象とした質問紙調査を実施した。養育環境の変数としては、先行研究(eg.Magaietal.,1995)に習って、主に児童期くらいまでに受けた養育態度の質(理由づけ、体罰、愛情撤退、罪悪感誘導といった各養育方略の経験の程度)、親子間の愛着、家族全体の情緒的雰囲気などを取り上げた。また、自己の感情の理解および他者の感情の読み取り、さらにはそれらに密接に連関するものとして個人の日常における主観的感情経験の質についてデータを得た。結果としては、安定した愛着傾向を示す個人ほど、自己の感情の理解・制御に長けていること、また、特に男性において愛情撤退型の養育を多く経験してきた個人ほど自己の感情の制御が不得手であり、一方、女性では、理由づけ型および罪悪感誘導型の養育を多く受けてきた個人ほど自己の感情の理解・制御が巧みであること、さらには家族の情緒的雰囲気が陰性であるほど自己の感情の理解が阻害される傾向のあることなどが、明らかになった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)