「集団内地位モジュール」の進化・生態学的基盤に関する予備的検討
【研究分野】社会心理学
【研究キーワード】
地位 / モジュール / 適応 / 進化 / 社会制御 / 秩序 / 進化ゲーム
【研究成果の概要】
本研究は人間の社会性の理解にとって重要でありながら、体系的に検討されることの少なかった「人間の集団内地位行動」に進化・生態学的観点から接近を試みる。近年の霊長類学や行動生態学の知見が示すように、霊長類は、地位構造を含む集団内の社会関係を巧みに利用しながら集団生活への適応を実現している。マキャヴェリ的知性に関する研究は、チンパンジーのオスが社会的序列を利用した複雑な同盟関係を結び、メスもまたそうした序列を背景に採餌・子育て戦略を形成することを明らかにしている。同時に「推移律」の理解などの認知能力も、社会的な序列関係の理解を基盤に行われる可能性が指摘されている。こうした最近の知見は、霊長類が"地位モジュール"とでも呼ぶべき領域特殊的な認知機能を獲得していることを示唆する。本研究では、こうしたモジュール的機能が、極めて高度の社会性を有する人間においてどのように働くのか、心理学実験と進化ゲームによるモデル化を通じて探索的な検討を試みる。
17年度の検討から、社会制御のためのシステムとして、地位序列を基盤とした「官僚型」のシステム、内外集団の区別を基本的に重視しない(従って地位序列も重視しない)「企業家型」のシステムの2つが持続可能な進化的安定均衡として存在する可能性が示唆された。ここから得られるインプリケーションは、「これらの社会制御システムは、それぞれ異なる感情・行動群を要請する心的モジュールとして、個人に実装されている」という命題である。18年度は、この命題を、Producer-Scrumger Gameと呼ばれる実験ゲーム状況での行動パタンを組織的に観察することで検討した。これらの実験では、他者の協力行動に応じて正反対の行動を取る2タイプの被験者が繰り返し観察され、これらの被験者は社会制御の方法について、命題の予測通り、異なる信念群をもっていることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中島 晃 | 北海道大学 | 大学院文学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)