統計・機械学習による異分野相関を俯瞰する方法論の確立
【研究キーワード】
異分野相関 / 統合評価モデル / データ駆動 / 確率モデル
【研究成果の概要】
COVID-19のパンデミックが世界経済に与える影響は、2008年の世界金融危機よりも深刻であり、COVID-19が経済や気候に与える影響を予測することは、現在、大きな関心事となっている。本研究では、経済への確率的ショックを含むように拡張したDICE(Dynamic Integrated Climate-Economy)モデルを用いて、COVID-19のようなショックイベントが経済や気候に与える影響を検討した。DICEモデルの基礎となる状態変数に確率的な要素を取り入れ、再帰的な動的計画問題として解くことを試みた。ショックイベントによって引き起こされるジャンププロセスとして、離散的な確率的ショック変数を追加してDICEモデルを拡張し、ストレス状態と通常状態における経済をモデル化した。この拡張モデルをショックイベントが100年に1度ランダムに発生し、それが5年間続くと仮定して、最適確率制御問題としていくつかのシナリオで解いた。その結果、各ショックイベント後に世界の総生産が完全に回復するならば、COVID-19のショックイベントが気温や炭素濃度に与える影響は、保守的に5年間で年間の総生産が10%減少した場合でも重大ではないことを示した。しかし、ショックイベントによって生産高が5%減少し、再帰的に生産性の低下をもたらして次の期間に伝播した場合には、長期的な気温低下は0.1℃であるものの、炭素濃度に与える影響は大きいことを示した。決定論的なDICEモデルを用いた場合には、気温低下はより大きくなることを示した(約0.25℃)。
【研究代表者】