一般化された対数に基づく高速な独立成分分析法に関する研究
【研究分野】知能情報学
【研究キーワード】
独立成分分析 / 凸ダイバージェンス / モーメンタム / 磁気共鳴機能画像 / 脳の機能マップ / 高速アルゴリズム / f-ICA / fMRI / 脳機能解析
【研究成果の概要】
独立成分分析(ICA ; Independent Component Analysis)とは,独立な未知信号の混合となっている複数の観測信号を用いて,元の未知信号を推定する手法である.この研究ではその独立性を,確率過程間の一般化距離である凸ダイバージェンスの最小化として捉える立場をとった.これは,従来の相互情報量最小化法を特例として含んでおり,研究題目にある一般化された対数を使用することに相当している.本研究においては,この手法を用いてICAアルゴリズムを導出し,f-ICAと命名した.このアルゴリズムは,数式レベルにおいては未知信号に関する期待値を必要とするので,ソフトウェアとして実現するためには観測データを用いてこの量の代替を行う必要がある.本研究においてはその手法として,更新量のモーメンタムを利用する方法(モーメンタム法)と,将来の予測量を利用する方法(ターボ法)とを提案した.また,独立成分分析に固有な「成分間の順序不確定性」に対しても,先見知識を正則化項として注入することにより主要成分が常に先頭に現れるようにすることに成功した.
以上のようにして得られた独立成分分析システムは,従来の相互情報量最小化法と比べて,プログラム複雑度をわずかに増加させるだけで数倍の高速化を達成できる.その結果,磁気共鳴機能画像(fMRI)のように大きなデータでも,パーソナルコンピュータで取り扱えるようになった.また,実験的には,次のように脳の機能マップを検出することに成功した.すなわち,(i)人間が動画像を見ているときに,「静止画像ではなくて動画像である」と認識する部位が,右脳の後頭部(dorsal occipital cortex)にあること,そして,(ii)視覚野におけるV1とV2の境界部位の検出を行うことができた.
なお,本研究においては,上記の一連の結果を得る過程において,従来は現れてこなかった統計量の提案とその理論的性質を数多く与えており,純理論面においても新たな成果を得ている.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)