統語処理と音韻処理を統合する発話生成文法の研究
【研究分野】言語学・音声学
【研究キーワード】
文解析 / パーザ / HPSG / Dynamic Syntax / 神経言語学 / fMRI / 脳波 / 事象関連電位 / 逐次的文分析処理 / 作業記憶 / 身体動作・感覚 / 統語処理 / 音韻処理 / 発話生成
【研究成果の概要】
コンピュータ言語学および形式文法の立場から、文の意味から音声発話にいたるまでの意味論、統語論、形態論、音韻論の各部門の相互関係を明確にモデル化することを目的として、主としてそれが逐次的な文処理とどのように関係するかという問題を取り上げて考察した。研究を進めるにつれ、脳波計測(事象関連電位)および機能的磁気イメージング法(fMRI)を用いた、いわゆる非侵襲的手段による文処理時の脳活動の観測およびその過程のダイナミック統語理論(Dynamic Syntax)による文処理のモデル化が有効であることが判明したので、これを中心として研究を行った。本研究の主な成果として3点を挙げることが出来る。第一に、日本語が入力順、逐次的に、しかも後続の語を予想しながら処理されているという仮説を確かめるためにfMRIを用いて能動文と受動文の処理を比較した。その結果、受動文の処理には能動文に比べてより多くの脳の負荷がかかっていることが分かった。これは受動文の文末においてそれが裏切られるまでは文は能動文であるとの予測をして処理が行われるからであると考えられ、仮説が確かめられたことになる。二つには、事象関連電位の観察を通じて、複雑な文の処理においては逐次的に作業記憶の負荷が高まるとの仮説を確認した。最後に、同じく逐次的処理に関連して、英語等の言語において一致規則を満たさない文について観察される事象関連電位の観測を日本語の主語・述語間で意味の逸脱した文について試み、この種の日本語の文では問題の事象関連電位が観測されないというこれまでの通説を確認した。また、ダイナミック統語理論にもとづいてコンピュータ上に逐次的な文処理システムをインプリメントして脳における発話処理をシミュレートして、理論の有効性を確かめた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
藤波 努 | 北陸先端科学技術大学院大学 | 知識科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
森 芳樹 | 筑波大学 | 大学院・人文社会科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)