計算物理学とデータマイニングの融合による結晶学への現実的・効率的アプローチ
【研究分野】知能情報学
【研究キーワード】
データマイニング / 精密結晶構造解析 / 第一原理計算 / フラーレン化合物 / 密度汎関数 / 金属クラスター
【研究成果の概要】
本プロジェクトは、情報科学的観点及び概念を材料科学研究に導入し、材料の解析・設計から新規材料開発に至る材料科学研究プロセスの新しい枠組みを提案することをスコープとした。今回、新たな材料科学研究手法の具体的なプロトタイプを行い、その拡張性の検討を行うことを通じて、提案した枠組みが研究手法に転換をもたらす革新的アプローチであることを実証した。本研究プロジェクトでは、結晶学研究に対し最大エントロピー法に物理学の予備的知識の導入、粉末回折スペクトルから極めて正確に結晶の電子密度を予測するスキームの確立、フラーレン材料を対象とする分子性結晶構造解析への適用性の実証、について段階的に取り組み、いくつかの材料研究において成功を収めた。金属ドープフラーレン材料に関しては、高温・高圧下のフラーレンベースネットワーク材料の構造決定に成功した。新規材料設計の研究においては、物理の第一原理計算手法を用いて、ナノテクノロジーに有望なカーボンナノチューブを研究の対象として取り上げ、新規であるカーボンナノチューブに吸着した金属クラスターの電子状態を明らかにし、優れたその触媒機能性のメカニズムを解明した。一方、この研究を支援する情報科学、特にデータマイニング分野では、カーネル手法、データ・発見プロセスおよび規則の可視化、ルール帰納法、最適化に関する基礎研究上の諸課題について、材料科学における実証・応用とともに成果をあげた。材料科学研究においては、既存の計算物理学の適用に加え、本研究を拡張し、大量・複雑なデータに潜在する関係性を発見することで知見を獲得し、材料の構造解析など計算力が要求されるプロセスを準自動化する等、新規材料設計・開発への効率的で効果的な支援手法の確立が期待される。
【研究代表者】