in silicoとロボットによる創薬支援システムの開発とシャーガス病治療薬探索
【研究キーワード】
ケモインフォマティクス / IT創薬 / 機械学習 / AI創薬 / 抗規制原虫薬 / ロボット / 自動合成 / 寄生原虫
【研究成果の概要】
標的タンパク質に対してヒット化合物が得られた後の創薬のプロセスの一つである化合物最適化では、特定のヒット化合物を出発点として物性を改善したより薬らしい化合物の探索を行う。機械学習を利用した化合物生成モデルの一つであるChemTSは優れた物性を持つ化合物を生成することに成功したが、特定の化合物を出発点とした化合物生成には対応していなかった。創薬では、HTSなどの実験で得られたヒット化合物の標的タンパク質への結合能や物性を改善し、薬様化合物に最適化していくため、本研究では化合物をSMILES形式で表現した上でモンテカルロ木探索を用い、特定の化合物の誘導体を生成することが可能な手法を開発した。本手法について化合物の薬らしさの指標であるQEDを最適化する実験を行った結果、平均QEDが0.63の化合物群に対して0.93を超える化合物を生成することに成功した。一方で、SMILESは生成モデルでは一般的に使われる表現ではあるが、我々の研究から最適化のためのSMILESの文字列の挿入や削除により、母核を明示的に保護しない場合、ヒット化合物からの類似性が極端に損なわれることがあることが分かった。このため、化合物最適化の為にはSMILES表現ベースではなく、グラフ表現ベースの方がより適切ではないかと考えるに至っており、現在、化合物最適化においてグラフ表現ベースの最適化手法について開発を進めている。また、ウェットの実験を行う分担者との連携を重ね、機械学習による化合物生成、生成された化合物のウェット実験での化合物の合成、アッセイ試験という流れについてそれぞれ実験可能な状況になってきていることの確認を行うことが出来た。今年度は、情報処理学会第84回全国大会で学生奨励賞、情報処理学会第69回バイオ情報学研究発表会において2件のベストプレゼンテーション賞受賞を受賞した。
【研究代表者】