創造産業クラスターの形成による都市・地域経済の再生に関する国際比較研究
【研究分野】応用経済学
【研究キーワード】
創造産業 / 文化産業 / クラスター / 知的所有権 / 芸術文化 / コンテンツ / プロデューサー / 文化政策
【研究成果の概要】
本研究は、「創造産業」に注目し、そのクラスター形成による「都市・地域経済の再生」を軸に新しい都市経済政策のあり方を検討するものであり、イギリス・オランダ・シンガポールなどの事例を取り上げて比較分析し、創造産業クラスターの形成プロセスの特徴を明らかにすることによって、日本の都市・地域における創造産業クラスター形成のための条件を析出した。
「創造産業」の特徴は、独創性のある芸術文化のコンテンツを創造するか、その応用と普及のプロセスに関わる産業であるという点であり、供給サイドから見ればコンテンツを創造するクリエイターとそれを消費者や市場と結びつける編集者、そして経営の専門家という多様な人的知的資源を必要とする先端的な知的集約産業である。
一般の産業クラスターと比較した創造産業クラスターの特徴は(1)クラスターを形成する主体間のネットワークの質的な内容、特に「暗黙知」のやり取りやそのスピルオーバーのプロセスが重要となり、(2)クラスターを形成する企業間の取引において、人と人との信頼関係に基づく非金銭的な取引の重要性が大きくなり、それゆえ、(3)経済的側面のみならず、都市や地域の文化的文脈や制度的厚みが重要となるということである。
したがって、創造産業クラスター形成のためには、(1)コンテンツを創造するクリエイターと視野の広い編集者やプロデューサーを育成するための文化的インキュベーション施策が中心的位置を占め、(2)「暗黙知」のやり取りにふさわしい創造的環境の形成と一体となった産業支援策が必要となり、(3)都市固有の文化的文脈を踏まえた市場と評価軸の確立が重要となる。
【研究代表者】