入力に強い相関のある待ち行列過程の動的解析と最近の通信トラヒック技術への応用
【研究分野】社会システム工学・安全システム
【研究キーワード】
確率モデル / 確率過程における相関性 / 漸近解析 / 待ち行列 / インターネット / Webキャッシュ / 通信品質 / DoS攻撃 / 確率過程の相関 / 確率順序 / 裾の重い分布 / 点過程 / 相関のある確率過程
【研究成果の概要】
本研究の目的は,入力に相関性を有する待ち行列モデル,また,さらに一般的な確率ネットワークに対して,定常性を仮定しない解析,あるいは動的なふるまいの解析を行ない,インターネット等に見られる様々な新しい特性の評価に応用することです.この目的の遂行のため,また関連する課題として,今年度に行なった研究は以下の通りです.
1.入力に相関を許す離散時間型の単一サーバ待ち行列モデルに対して,待合室の容量が異なるシステム間に成り立つ比例関係について解析しました.その結果は海外の学術論文誌への掲載が決定しています.ここではサンプルパス解析と呼ばれる手法を用いて,確率過程の定常性さえ要らない極めて一般的な仮定のもとで,待合室の容量が異なるシステムの系内人数分布の問に比例関係が成立することを示し,またその比例定数もサンプルパスを観測して得られる量から導けることを示しています.
2.昨年度からのテーマとして,インターネットにおけるWebキャッシュ等で用いられているLRU(Least-Recently-Used)キャッシュの解析を行ないました.ここでは,Webページへのアクセス頻度にZipfの法則と呼ばれる裾の重い分布の形が見られることから,このZipfの法則を仮定し,ページアクセス過程には任意の相関を許して,キャッシュの効率の良さの指標であるページフォールト率の漸近解析を行ないました.この成果も海外の学術論文誌への掲載が決定しています.
3.近年問題になっているインターネットにおけるDoS攻撃(サービス妨害攻撃)への対抗策である,確率的パケットマーキングによるIPトレースバック技術の性能評価法に関する研究も行いました.この問題は,組合せ確率論における古典的な問題であるクーポン収集問題の応用として表せることから,まずクーポン収集問題に対する漸近解析を行っています.
4.本研究の応用の面での成果である,インターネットにおける通信品質を測定するための新しい手法について,得られた結果を海外の学術論文誌に投稿中と昨年度の報告書に書きましたが,残念ながら投稿して一年以上経過しているにもかかわらず,まだ一度目の審査結果さえ返って来ていません.提案した手法は,測定のためにネットワークに送り込む試験パケットによる負荷を極力抑えながら,複数の利用者が受けるサービス品質を同時にかつ個別に測定できるというものであり,確率論における測度変換,サンプルパス解析,点過程および流体近似等の概念を用いています.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2003 - 2005
【配分額】2,900千円 (直接経費: 2,900千円)