シミュレーションと機械学習の協調による予測に基づいた動的負荷分散手法の開発
【研究キーワード】
ステンシル計算 / 高性能計算 / 機械学習 / 高生産フレームワーク / 適合細分化格子法 / 動的負荷分散
【研究成果の概要】
流体計算などの格子に基づく計算では、高精度が必要な領域をより高精細な格子で計算できる適合細分化格子(AMR)法がマルチスケール問題解決の鍵となる技術として注目されている。本研究では、大規模GPUスパコンで従来と比較して極めて高性能なAMR計算を実現するため、機械学習によりシミュレーションの「未来」の結果を予測し、それに基づき計算負荷を動的に分散する手法を開発する。開発手法を課題代表者らが開発中のAMR法フレームワークへ導入し、様々な実アプリケーションへ適用することを目指す。
本年度においては、ほぼ当初の計画通りに、深層学習で、規模の大きい流体シミュレーションの 「未来」の結果を予測する手法を開発した。研究を進めるにつれ、深層学習では均一な格子上のデータが取り扱いやすいことがわかり、AMR法による局所的に解像度が異なるデータを直接学習するよりも、均一な格子上のデータを学習する方が有効であることがわかってきた。複数の時間ステップを一つの空間の次元として捉えてEncoder-decoderモデルを構築した。これにスキップ接続を導入し、速度勾配などを損失関数に加えて、深層ニューラルネットワークモデルを構築し、これが精度向上に有効であるという知見を得た。流体計算の予測は可能とわかったものの、サイズの大きいデータを深層学習で直接学習することは難しい。そこで、小規模な領域のデータで学習を行い、推論ではそれを大規模な計算領域にパッチ的に適用する手法を開発した。この手法とこれまでに開発した間引かれた複数の時間ステップの計算履歴から、その先の時間ステップのデータを予測する手法を統合することで、学習で用いたデータよりも大きい規模の計算領域に対して、「未来」の結果を予測できる手法を構築した。これと並行して、AMR法フレームワーク自体を近年注目されている格子ボルツマン法に適用できるように高度化した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)