動的資源管理機能を備えた大規模並列プログラミング環境の開発と計算化学への応用
【研究分野】計算機科学
【研究キーワード】
並列計算 / 並列プログラミング環境 / MPI / プロセッサ割当て / スケジューリング / 分子動力学法 / 計算化学 / 分子動力学計算 / 大規模並列計算機 / 科学技術計算 / 動的資源管理 / 分子動力学シュミレーション / エネルギー最小化計算
【研究成果の概要】
本研究では、動的資源管理機能を備えた大規模並列システムのための並列プログラミング環境Parsleyを開発し、計算化学の諸問題に適用して、その有用性を実証した。Parsleyでは、アプリケーションプログラムは並列処理可能な部分問題(サプタスクと呼ぶ)に分割され、それらを単位としてプロセッサが割り当てられ実行される。サブタスク間には、実行の先行制約が依存関係として定義され、それとともにサブタスクグラフが形成される。システムはそのサブタスクグラフの内容に従ってプロセッサの割り当て(スケジューリング)を行う。サブタスクの定義は、物理的なハードウェア構成とは独立であり、また、サブタスク間の通信も実行時にプロセッサ間の通信(MPIの通信命令)に変換される。このように、基盤となるハードウェア環境およびアプリケーションに適応した並列化を実現することを目指している。分子動力学シミュレーション(MD)をParsley上に実現し、BPTI+水系(原子数16735)を対象に日立SR2201(プロセッサ数125台)上で実行したところ、Parsley上のMDで、従来の空間分割法のMDに比べて3.49倍の性能向上を達成した。また、Lysozyme+水系(原子数19754)では、日立SR2201(プロセッサ数175台)上で、3.8倍の性能向上を達成した。さらに、本研究では、タスクグラフに繰返し構造がある場合、タスクの実行の履歴をもとに、スケジューリング方式を自動改善する機構を開発した。基本的な方針は、定期的にスケジューリングを行い、その都度、遅れている処理ほど優先的にプロセッサを割り当てるとともに、タスクの実行時間に基づいて、その先のタスクグラフを再構築するというものである。分子動力学法にこの機構を適用し、クラスタ型並列計算機上で性能評価を行った結果、プロセッサ台数が16台のとき、プロセッサ使用率を55%向上させることができ、実行時間を9.6%短縮するという結果を得ることができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中村 周吾 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
池口 満徳 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】6,500千円 (直接経費: 6,500千円)