最先端のデータサイエンスで切り拓く「富岳」時代のリアルタイム豪雨・洪水予測
【研究キーワード】
データ同化 / 機械学習 / 数値気象モデル / 豪雨予測 / データサイエンス
【研究成果の概要】
本研究の目的は、これまで独立して進んできた気象・水文モデル予測とデータ同化・機械学習を統合し、「富岳」時代の高精度・高頻度なリアルタイム豪雨・洪水予測を確立することである。2021年度は下記(a)-(d)の研究を推進した。
(a) 極端気象予測の改善: 雲微物理の不確定要素である雪氷種は、モデル予測の精度を左右する重要な要素であるが、現状では検証データが十分にない。2021年度には雪氷種画像を分類する畳み込み画像識別器CNN開発した。図鑑画像を教師にしたCNNにより、数値モデルで扱う主要な雪氷種分類に成功した。
(b) 水文データ同化による洪水予測の高精度化: 降雨・流出・氾濫一体解析モデルRRIにアンサンブルカルマンフィルタ (EnKF)を実装し、初期値改善によりリアルタイム洪水・浸水予測を高精度化する。2021年度には、雄物川を対象にしたRRI-EnKFのプロトタイプを完成させた。
(c) 衛星ビッグデータを用いた豪雨の高頻度予測: 線状降水帯の発達の鍵となる水蒸気分布“湿舌”の形成を予測するため、時空間的に密な衛星ビッグデータを用いた、湿舌のデータ駆動型予測手法を構築する。2021年度は畳み込み時系列予測モデル Convolutional LSTMの開発を開始しており、単純な画像補完問題 (Moving MNIST)で良好な動作を確認した。
(d) AIダム操作最適化による災害緩和手法の構築:ここでは高速計算可能な洪水予測エミュレータを開発し洪水の高頻度予測を実現する。2021年度は、雄物川流域を対象に、洪水氾濫モデルの長期積分を行い、その入力・出力関係を関連付ける機械学習・エミュレータを開発した。特に、入出力データを情報圧縮したうえでニューラルネットワークによる回帰学習をさせることで、より少ないアンプルデータからのエミュレーティングを可能にした。
【研究代表者】