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名古屋大学 研究Discovery Saga
2026年10月22日

1粒子ごとに炎症の由来組織と細胞状態を捉える新技術開発

~血液や尿を用いた低侵襲な診断や病態評価への応用に期待~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
血液や尿を用いて局所的な炎症を捉える、非侵襲な病態評価・診断技術への応用に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
微細化/ナノメートル/モニタリング/脂質膜/セルロース/細胞外小胞/腎移植/プローブ/拒絶反応/血液/膜タンパク質/膜融合/バイオマーカー/遺伝子/抗体/脂質/臓器移植/低侵襲/非侵襲



工学
2026.10.21

研究のポイント

・細胞外小胞(Extracellular vesicle:EV)注1)1粒子ごとに、表面の膜タンパク質と内部のmicroRNA注2)を同時に検出する新技術を開発。
・由来組織を示す膜タンパク質と炎症状態を示すmicroRNAを組み合わせ、慢性活動性抗体関連型拒絶反応(CAAMR)注3)に関連するEV集団を患者尿から検出。
・血液や尿を用いて局所的な炎症を捉える、非侵襲な病態評価・診断技術への応用に期待。
 
東京科学大学生命理工学院(研究委託機関:名古屋大学)・日本学術振興会特別研究員(DC)の川口 彰太 氏、名古屋大学大学院工学研究科の阿尻 大雅 助教、安井 隆雄 教授らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所の古賀 大尚 准教授、北海道大学大学院工学研究院の渡慶次 学 教授、神戸薬科大学生命分析化学研究室の神谷 由紀子 教授らとの共同研究により、細胞外小胞(EV)1粒子ごとに、膜表面のタンパク質と内部のmicroRNAを同時に検出する新たな解析技術を開発しました。
EVは細胞から分泌される微小な粒子で、血液や尿などの体液中に存在しています。EVには、由来する組織や細胞の状態を反映するさまざまな分子が含まれていることから、疾患を非侵襲に評価するための新たなバイオマーカーとして注目されています。しかし、従来は多数のEVをまとめて測定する方法が中心であり、個々のEVが「どの組織に由来し、どのような状態を反映しているのか」を同時に捉えることは困難でした。
本研究では、セルロースナノファイバ注4)シートを利用した膜融合注5)技術により、EVを破壊することなく内部に検出プローブを導入し、膜表面の膜タンパク質と内部のmicroRNAを同一粒子上で同時に解析することを可能にしました。この技術により、微量な尿から、どこで、どのような炎症が起きているかを検出できる可能性を示すことができました。
将来的には、血液や尿などを用いて体内の局所的な炎症状態を非侵襲に評価する、新たな診断・モニタリング技術への応用が期待されます。
本研究成果は、2026年10月17日に国際学術雑誌『Cell Reports Physical Science』にオンライン掲載されました(2026年11月18日号掲載予定)。
 
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
 

用語解説

注1)細胞外小胞(Extracellular vesicle:EV):
細胞から分泌される、脂質膜に包まれた微小な粒子。タンパク質やRNAなどを含み、由来する細胞の特徴や状態を反映することから、疾患バイオマーカーとして注目されている。
注2)microRNA:
遺伝子の働きを調節する短いRNAの一種。細胞の種類や状態、疾患などによってその種類や量が変化することから、バイオマーカーとして広く研究されている。
注3)慢性活動性抗体関連型拒絶反応(CAAMR):
臓器移植後に、抗体を介した免疫反応によって移植臓器への障害が持続する拒絶反応の一種。本研究では、腎移植患者の尿中EVを用いて解析を行った。
注4)セルロースナノファイバ:
木材由来のセルロースパルプをナノメートルサイズまで微細化した繊維状材料。本研究では、セルロースナノファイバからなるシートを利用した膜融合によって、EV内部へ検出プローブを導入した。
注5)膜融合:
脂質膜同士が融合し、その内容物や膜成分が混ざり合う現象。本研究では、この現象を利用してEVの構造を大きく損なうことなく、内部のmicroRNAを検出するためのプローブを導入した。
 

論文情報

雑誌名:Cell Reports Physical Science
論文タイトル:Non-destructive colocalization sensing of microRNAs and membrane proteins in single vesicles reveals spatial inflammation signatures
著者:Shota Kawaguchi*, Taiga Ajiri*, Kunanon Chattrairat*, Hirotaka Koga, Yukiko Kamiya, Fuminori Sato, Hiroyuki Asanuma, Masatoshi Maeki, Manabu Tokeshi, Takeshi Yokoyama, Yoshikazu Tanaka, Kosuke Yoshida, Akira Yokoi, Kiyohiko Hotta, Naoya Iwahara, Yuichiro Fujieda, Mitsutaka Yasuda, Tatsuya Atsumi, Shimpei I. Kubota, Kaoru Murakami, Masaaki Murakami, and Takao Yasui*
DOI: 10.1016/j.xcrp.2026.103613
URL:https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2026.103613
 

研究代表者

大学院工学研究科 安井 隆雄 教授, 東京科学大学生命理工学院(研究委託機関:名古屋大学)・日本学術振興会特別研究員(DC)川口 彰太 氏,
大学院工学研究科 阿尻 大雅 助教,大学院工学研究科 Kunanon Chattrairat 特任助教
https://yasuilab.chembio.nagoya-u.ac.jp/