短期間で製造し、より強く、より長く効く次世代CAR-T細胞を開発
―従来法の1/30の投与量で同等以上の抗腫瘍効果を発揮―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 現在も治療が困難な固形がんに対するCAR-T細胞療法の課題を克服する新たなアプローチとなることが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
最適化/メモリ/遺伝子改変/リンパ腫/固形腫瘍/CAR-T細胞療法/メモリーT細胞/悪性リンパ腫/抗腫瘍免疫/臨床応用/T細胞/がん細胞/遺伝子導入/血液/抗腫瘍効果/細胞増殖/細胞療法/腫瘍免疫/樹状細胞/白血病/免疫学/免疫細胞/遺伝子/疫学
発表のポイント
IL-7とCCL19を同時産生する独自の「7×19 CAR技術(PRIME技術)」と短期培養法を組み合わせた「Swift 7×19 CAR-T細胞(Swift PRIME CAR-T細胞)」を開発しました。Swift 7×19 CAR-T細胞は、ステムセルメモリーT細胞などの若いメモリーT細胞を高い割合で保持し、がん細胞による繰り返しの刺激に対しても疲弊しにくく、持続的な増殖能と抗腫瘍活性を示しました。
固形腫瘍モデルにおいて、従来法で作製したStandard 7×19 CAR-T細胞のわずか1/30の投与量でも同等以上の抗腫瘍効果を発揮しました。
CAR-T細胞の製造期間短縮と高機能化を同時に実現することで、難治性固形がんに対する次世代CAR-T細胞療法につながる可能性を示しました。
発表概要
山口大学大学院医学系研究科免疫学講座の玉田耕治教授、佐古田幸美准教授、安達圭志講師、病態制御内科学講座の太田康晴教授、酒井康平大学院生らの研究グループは、短期間で製造可能でありながら、従来法で製造したCAR-T細胞を上回る高い機能と持続的な抗腫瘍効果を示す「Swift 7×19 CAR-T細胞」を開発しました。Swift 7×19 CAR-T細胞は、IL-7とCCL19を同時産生する「7×19 CAR技術(PRIME技術)」と短期培養法「Swift」を組み合わせたもので、「Swift PRIME CAR-T細胞」とも呼ばれます。本研究成果は、学術誌「Molecular Cancer Therapeutics」に2026年7月6日付でOnline Firstとして掲載されました。
研究の背景
CAR-T細胞療法は、患者さんから採取したT細胞に遺伝子改変を施し、がん細胞を認識・攻撃する能力を付与して体内に戻す治療法です。白血病や悪性リンパ腫などの血液腫瘍では高い治療効果を示していますが、固形がんに対する有効性は依然として限定的です。また、患者さん自身のT細胞を用いて製造するため、製造期間の長さや製造コストも重要な課題となっています。長期間の培養は治療に必要な細胞数を確保できる一方で、T細胞の分化や疲弊を進める可能性があります。これに対し、培養期間を短縮することで、若く高い増殖能力を持つT細胞の性質を維持したままCAR-T細胞を製造できる可能性が示されています。これらの課題を克服するため、山口大学大学院医学系研究科免疫学講座では、これまでに、T細胞の増殖やメモリー形成を促進するIL-7と、T細胞や樹状細胞を腫瘍局所へ呼び寄せるCCL19を同時に産生する「7×19 CAR-T細胞」を開発してきました。7×19 CAR-T細胞は、CAR-T細胞自身の機能を高めるだけでなく、患者さん自身の免疫細胞を腫瘍局所へ集積させることで、固形がんに対する抗腫瘍免疫を強化することを目指した技術です。
研究の成果
研究グループは、この7×19 CAR技術と短期培養法を組み合わせることで、製造期間の短縮とCAR-T細胞のさらなる高機能化を同時に実現できるのではないかと考えました。そこで、CAR遺伝子導入後の長期間の細胞増殖工程を省略して短期間で製造する「Swift 7×19 CAR-T細胞」を作製し、その特性と抗腫瘍効果を評価しました。その結果、Swift 7×19 CAR-T細胞では、ステムセルメモリーT細胞やセントラルメモリーT細胞などの若いメモリーT細胞が高い割合で維持され、従来の培養方法で製造したStandard 7×19 CAR-T細胞と比較して優れたエフェクター機能を示しました。さらに、がん細胞による刺激が繰り返される厳しい環境においても疲弊しにくく、IL-7の持続的な産生とともに、CAR-T細胞の増殖能と抗腫瘍活性が長期間維持されることが明らかとなりました。
特に、固形腫瘍モデルでは、Standard 7×19 CAR-T細胞のわずか1/30の投与量で同等以上の抗腫瘍効果を示し、その治療効果が長期間持続しました。この結果は、単にCAR-T細胞を短期間で製造できるだけでなく、培養期間を短縮することによってCAR-T細胞本来の高い機能を維持し、7×19 CAR技術(PRIME技術)の効果をさらに引き出せる可能性を示すものです。
今後の展望
本研究により、「Swift」による短期培養法と「7×19 CAR技術」を組み合わせることで、CAR-T細胞の製造期間短縮と高機能化を同時に実現できる可能性が示されました。これは、現在も治療が困難な固形がんに対するCAR-T細胞療法の課題を克服する新たなアプローチとなることが期待されます。今後、「Swift 7×19 CAR-T細胞」のさらなる設計・製造条件の最適化を進め、固形がんに対する新たなCAR-T細胞療法としての臨床応用を目指して、安全性および有効性の検証を進めていきます。
図:Swift 7×19 CAR-T細胞の概要
論文情報
タイトル:Short-term manufacturing of IL-7/CCL19-expressing CAR-T cells enhances and prolongs therapeutic effects in solid tumor models著者:Kohei Sakai, Yukimi Sakoda, Keishi Adachi, Yasuharu Ohta, Koji Tamada
掲載誌:Molecular Cancer Therapeutics
公表日:2026年7月6日(Online First)
DOI:10.1158/1535-7163.MCT-25-1389
問い合わせ先
<研究に関すること>山口大学大学院医学系研究科 免疫学講座
E-mail:immunol@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
<報道に関すること>
山口大学医学部総務課広報・国際係
TEL:0836-22-2009
E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
山口大学 研究