数千個の細胞から狙った1細胞を回収するマイクロピペットを開発!
大きさや運動性が異なる細胞に対応し、任意の細胞を回収して遺伝子解析へ 工学研究院 佐久間臣耶 准教授
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 顕微鏡観察技術と遺伝子解析技術を橋渡しし、さまざまな細胞集団の不均一性を明らかにする、より詳細な単一細胞解析への応用が期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
2026.09.18
研究成果Technology
発表のポイント
多数の細胞の中から狙った1細胞を回収する技術は、細胞を詳細に解析する上で重要ですが、例えばマイクロピペット(※1)などを、大きさや運動性が異なる細胞へ幅広く適用することは困難でした。本研究では、マイクロ流体チップ(※2)を搭載したマイクロピペットを開発しました。マイクロ流体チップを対象に応じて交換可能とすることで、速く遊泳する藻類から大型の藻類まで、1つずつ回収することに成功しました。さらに、動物細胞を対象として、抗体の分泌状態に基づいて任意の細胞を回収し、その遺伝子発現を解析することに成功しました。
顕微鏡観察技術と遺伝子解析技術を橋渡しし、さまざまな細胞集団の不均一性を明らかにする、より詳細な単一細胞解析への応用が期待されます。
発表概要
多数の細胞の中から狙った1細胞を回収して解析する技術は、細胞集団の中にある細胞ごとの違いを明らかにするため、生物学や医療の分野で重要な技術となっています。しかし、例えばマイクロピペットなどを、大きさや運動性が異なるさまざまな細胞へ、幅広く適用することは困難でした。本研究では、交換可能なマイクロ流体チップを搭載した高速・高精度なマイクロピペットを開発しました。
九州大学大学院工学府の木山誠啓博士課程大学院生、九州大学大学院工学研究院の齋藤真助教、山西陽子教授、株式会社ライブセルダイアグノシスの山岸舞代表取締役、東京大学先端科学技術研究センターの白崎善隆准教授、九州大学大学院工学研究院の佐久間臣耶准教授の研究グループは、膜の変形と流体の応答を予測する理論モデルに基づき、半径が1、2、3 mmの3種類の円形膜構造を有するマイクロ流体チップを設計しました。これにより、最短2.7 ms(約0.003秒)の高速応答を実現しました。また、理論上、0.15 pLという極めて小さい体積から最大104 nLまで、約70万倍に及ぶ幅広い液量制御を可能にしました。
開発したマイクロピペットを用いて、高速に遊泳するユーグレナや大型のボルボックスを1つずつ回収することに成功しました。さらに、動物細胞を対象として、顕微鏡で可視化した抗体の分泌状態に基づいて任意の細胞を回収し、遺伝子発現を解析することに成功しました。
本成果により、大きさや運動性の異なるさまざまな細胞について、顕微鏡で観察した形や動き、分泌状態と、回収後に調べた遺伝子発現との関係を同じ細胞で対応付けることが可能になります。細胞集団を構成する一つひとつの細胞の違いを明らかにする単一細胞解析への応用が期待されます。
本研究は、2026年9月10日(現地時間)に国際学術雑誌「Sensors and Actuators B: Chemical」のオンライン版で公開されました。
参考図

用語解説
(※1) マイクロピペット先端の細いガラス毛細管などを用いて、微量の液体や微細な試料を吸引・吐出する器具。
(※2) マイクロ流体チップ
マイクロメートルスケールの微細な流路やポンプなどを基板上に形成した小型デバイス。微量の液体や細胞の混合、反応、分取、検出などを行うことができる。
論文情報
掲載誌:Sensors and Actuators, B: Chemicalタイトル:Micropipette integrated with exchangeable membrane-pump chips for imaging-guided single-cell isolation
著者名:Nariaki Kiyama, Makoto Saito, Yoko Yamanishi, Mai Yamagishi, Yoshitaka Shirasaki, and Shinya Sakuma
DOI:10.1016/j.snb.2026.140767
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