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九州大学 研究Discovery Saga
2026年9月24日

磁場エネルギーはなぜ急速に解放されるのか?

レーザー実験で太陽フレアや地球磁気圏の爆発的現象の謎に迫る 総合理工学研究院 森田太智 准教授

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
高速磁気リコネクションがどのような条件で生じるのかを明らかにし、宇宙における爆発的なエネルギー解放現象の理解につながることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
サブストーム/核融合/太陽フレア/地球磁気圏/オーロラ/宇宙プラズマ/磁気圏/プラズマ物理/磁気リコネクション/磁場/数値シミュレーション/太陽/持続可能/持続可能な開発/シミュレーション/レーザー/エネルギー変換/TEMPO/妥当性
2026.09.18 研究成果Physics & Chemistry

発表のポイント

レーザー生成プラズマ(※1)を用いて磁場のつなぎ替わり(磁気リコネクション(※2))の時間発展を詳細に計測
流入条件を大きく変えても、磁気エネルギーの解放速度はほぼ一定であることを実証
磁気リコネクション率(※3)は大域的な条件ではなく、局所的な電流シート(※4)の物理によって決まる可能性を示唆
太陽フレアや地球磁気圏で観測される高速なエネルギー解放現象を理解するための新たな実験的基準を提供

発表概要

 九州大学大学院総合理工学研究院の森田太智准教授らの研究グループは、大阪大学、北海道大学、青山学院大学、富山大学、成蹊大学、核融合科学研究所と共同で、大阪大学レーザー科学研究所の激光XIIレーザーを用いた実験により、宇宙プラズマで重要なエネルギー変換過程である磁気リコネクションの時間発展を詳細に計測しました。
 磁気リコネクションは、磁場中に蓄積されたエネルギーを粒子の加熱や高速流へと急激に変換する現象であり、太陽フレアや地球磁気圏サブストームなどの爆発的現象の根源と考えられています。しかし、なぜこれほど短時間で大量の磁気エネルギーを解放できるのか、その物理的仕組みは現在も活発に研究されています。
 本研究では、レーザー生成プラズマ同士が衝突する条件を変えることで、磁気リコネクションに流れ込むプラズマ密度や磁場強度などの初期条件を大きく変化させました。その結果、リコネクションが始まる時刻は大きく変化する一方で、磁気エネルギーが解放される速さを表す「リコネクション率」はほぼ同じ値となることを明らかにしました。
 今回の成果は、磁気エネルギーがどのように急速に解放されるのかという宇宙プラズマ物理学の重要課題に新たな実験的手掛かりを与えるものです。太陽フレアや地球磁気圏で観測される高速な磁気リコネクションの仕組みを理解するだけでなく、それらを説明する理論や数値シミュレーションの妥当性を検証するための基準として活用できます。今後、さらに多様な条件で実験を行うことで、高速磁気リコネクションがどのような条件で生じるのかを明らかにし、宇宙における爆発的なエネルギー解放現象の理解につながることが期待されます。
 本研究成果は、米国物理学会誌 Physical Review E に2026年9月8日(火)(日本時間)に掲載されました。



実験による磁化プラズマ生成とリコネクションの様子。 高出力レーザーで電離した炭素プラズマは自己生成された磁場とともに膨張し、中間面で磁気リコネクションが発生する。
研究者からひとこと
磁気リコネクション率が、流入条件を大きく変えてもほぼ一定であることを実験的に示せたことは大きな成果です。今回確立した計測手法を用いることで、今後はななめ磁場や非対称プラズマ流など、より現実的な宇宙プラズマ条件での磁気リコネクション研究へ発展させたいと考えています。(森田太智)

用語解説

(※1)プラズマ
電子とイオンが自由に運動できる電離気体。宇宙空間の物質の大部分はプラズマ状態にある。
(※2)磁気リコネクション
反対向きの磁場がつなぎ替わることで、磁場エネルギーが熱や運動エネルギーへ変換される現象。太陽フレアやオーロラ現象の原因となる重要なプラズマ過程。
(※3)リコネクション率
磁気エネルギーがどれだけ速く解放されるかを表す指標。宇宙プラズマでは一般に最大 0.1 程度の値が報告されており、その起源は未解決問題の一つ。
(※4)電流シート
磁場の向きが急激に変化し、強い電流が流れる薄い層。磁気リコネクションが起こる中心領域であり、磁場エネルギーが熱や流れのエネルギーに変換される場所。

論文情報

掲載誌:Physical Review E
タイトル:Characterizing the temporal evolution of Biermann-battery-driven magnetic reconnection in laser-ablated plasmas
著者名:T. Morita, Y. Muramoto, S. Isayama, M. Edamoto, M. Hanano, R. Ishikawa, Y. Kanesada, K. Koba, H. Kondo, S. Kurimaru, K. Maeda, Y. Maenosono, S. Matsukiyo, A. Morita, Y. Nagamatsu, G. Nakayama, T. Ogawa, K. Oshida, Y. Pan, K. Sakai, T. Sano, Y. Sato, N. Shimoda, J. Shiota, Y. Sudo, Y. Suzuki, T. Takezaki, S. J. Tanaka, K. Tomita, S. Ueno, S. Yakura, R. Yamazaki, and Y. Sakawa
DOI:10.1103/2b4s-5m1n
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