体内時計の「夜をつくるイオンチャネル」を特定
―夜間に神経活動を抑制する新たな仕組みを解明―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 睡眠・覚醒障害や自律神経機能の異常など、体内時計の乱れに起因する疾患の新たな予防と治療法の開発につながることが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
医薬保健研究域医学系、准教授
前島 隆司MAEJIMA, Takashi
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2026/9/24
概要
金沢大学医薬保健学総合研究科医学専攻博士課程4年のジェフン・ジュン、医薬保健研究域医学系の前島隆司准教授、津野祐輔講師、三枝理博教授と、北海道大学、東京大学の共同研究グループは、脳内の体内時計中枢において、夜間の神経活動を抑制する仕組みの中核を担うイオンチャネルを新たに特定しました。特定されたのはGIRKチャネル(※1)と呼ばれるイオンチャネルで、活性化されると細胞内から細胞外へカリウムイオンを流出させ、神経細胞の活動を抑える働きをします。本研究により、GIRKチャネルが、体内時計中枢である視交叉上核において、昼と夜で異なった神経活動パターン作り出す中心的な役割を担うことが明らかになりました。
研究グループは、視交叉上核を構成する神経細胞のうち、プロキネティシン2(Prok2)(※2)というシグナル分子を放出する特定の細胞集団に着目して研究を進めました。その結果、Prok2産生神経細胞は昼間に活動が高く、夜間には低下するという日内リズムを持っており、その夜間の活動を抑制させる分子実体としてGIRKチャネルが働いていることを突き止めました。
さらに、遺伝子工学的手法を用いて、マウスのProk2産生神経細胞からGIRKチャネルを除去すると、神経活動の日内リズムが失われるだけでなく、マウスの一日の活動リズムが乱れることも示されました。特に、夜行性のマウスにおいて夜間に活動を開始する時刻が著しく遅れるという特徴は、ヒトの概日リズム睡眠・覚醒障害(※3)のうち、いわゆる朝寝坊型の睡眠相後退症候群の症状と類似しています。
本研究は、体内時計が昼と夜で活動を切り替える分子メカニズムの理解を大きく前進させる成果であるとともに、睡眠・覚醒障害や自律神経機能の異常など、体内時計の乱れに起因する疾患の新たな予防と治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は,2026年7月31日に米国科学誌『The Journal of Neuroscience』のオンライン版に掲載されました。
金沢大学 研究