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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年9月1日

金属有機構造体(MOF)が加速するCO₂変換

振動エネルギーを活かす新しい触媒設

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
炭素循環に貢献する低環境負荷なCO₂変換プロセス技術への展開に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学数物系科学化学総合理工工学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
再資源化/炭素循環/クロスオーバー/圧電性/反応場/有機分子/電極触媒/金属有機構造体/持続可能/省エネ/還元反応/持続可能な開発/チタン/チタン酸バリウム/圧電体/光触媒/カーボン/CO2還元/リサイクル/環境負荷/高効率化/省エネルギー/多孔質/多孔質材料/超音波/二酸化炭素
2026-8-27●自然科学系産業科学研究所助教近藤 吉史

発表のポイント

「振動」などの力で化学反応を促進する圧電触媒を、金属有機構造体(MOF)で覆うことで、二酸化炭素(CO₂)から一酸化炭素(CO)への変換速度が従来の約4.3倍向上
CO₂を吸着・濃縮しやすいMOFと、単原子の銅(Cu)活性点を融合した「反応場」を圧電触媒表面に構築することで、高効率なCO₂還元反応を実現
炭素循環に貢献する低環境負荷なCO₂変換プロセス技術への展開に期待

発表概要

大阪大学産業科学研究所のCao Jingさん(大学院工学研究科博士後期課程)、佐々木蒼依さん(同 博士前期課程)、近藤吉史助教、Seo Yeongjun助教、後藤知代特任教授(常勤)(兼 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 教授)、関野徹教授、同大学院工学研究科 森浩亮教授の研究グループは、圧電体であるチタン酸バリウム(BaTiO₃)の表面に、2025年のノーベル化学賞の受賞対象にもなった多孔質材料である「金属有機構造体(MOF)」を被覆することによって、超音波照射下で二酸化炭素(CO₂)から一酸化炭素(CO)への変換が大幅に促進されることを世界で初めて明らかにしました(図1)。
本研究成果は、「水中ではCO₂が触媒表面に届きにくい」という課題を、MOFによる吸着・濃縮によって改善したことで、「反応物を集め、活性点へ届ける反応場そのものを設計する」という新たな圧電触媒の設計指針を示しました。この反応場設計の考え方は、圧電触媒に限らず、光触媒や電極触媒など幅広いCO₂資源化技術への展開が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌 『ACS Catalysis』 に、6月1日にオンライン掲載されました。



図1. 超音波照射下でのMOF被覆BaTiO₃によるCO₂変換の概略図

研究の背景

工業的に排出される二酸化炭素(CO₂)を有用な化学原料へと再資源化する技術の重要性が高まっています。特に一酸化炭素(CO)は、化学品の製造を支える重要な化学原料であり、CO₂をCOに変換する技術は、排出された炭素を再利用するカーボンリサイクル技術として期待されています。
その技術の一つとして注目を集めているのが、振動などの身近な機械的エネルギーを利用して化学反応を進める「圧電触媒」です。外部から高温・高圧を加える必要がなく、室温・常圧という非常に温和な条件でCO₂を変換できることから、省エネルギーかつ環境負荷の低い次世代のCO₂資源化技術として大きな期待が寄せられています。
一方で、従来の圧電触媒では、振動への応答性(圧電性)を向上させることに重点が置かれており、反応物であるCO₂を触媒表面へ効率よく供給する仕組みや、高効率に反応を進める活性点の設計は十分に検討されていませんでした。特に、水中におけるCO₂の触媒表面への供給が制限されることが、反応効率向上に向けた大きな課題となっていました。

研究の内容

研究グループは、従来の圧電触媒が抱えていた「水中ではCO₂が触媒表面に届きにくい」という課題の解決に向け、MOFに着目しました。MOFは、内部に多数の微細な空間を持つ多孔質材料であり、金属や有機分子の組み合わせを変えることで、目的に応じた機能を設計できる次世代材料として期待されています。
本研究では、圧電触媒であるBaTiO₃の表面を、CO₂を吸着・濃縮しやすいMOF(今回は疎水性MOFの一種であるZIF-8を使用)で被覆するとともに、そのMOFの構造内部にCO₂還元反応の活性点となる単原子状態のCu元素を導入した新しい触媒(Cu-ZIF-8/BT)を開発しました。MOFが周囲のCO₂を吸着して、局所的に濃縮し、近接するCu活性点へCO₂を効率よく供給することで、CO₂還元反応に適した反応場を形成します(図1)。比較としてCuを添加していないZIF-8のみを被覆した触媒(ZIF-8/BT)も作製し、超音波振動下でCO2還元反応を評価しました。
その結果、MOFの被覆によってCO₂還元反応が大幅に促進され、特にCu含有MOF被覆BaTiO₃(Cu-ZIF-8/BT)では、従来のBaTiO₃触媒(BT)と比較してCO生成活性を約4.3倍まで向上させることに成功しました(図2)。



図2. 開発した触媒を超音波照射下でのCO₂還元反応に用いた際のCO生成速度の比較

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、未利用エネルギーである振動エネルギーを活用した低環境負荷なCO₂変換技術の高効率化が期待されます。具体的には、「反応物であるCO₂を効率よく集め、活性点へ届ける反応場を設計する」という新たな圧電触媒の設計指針を示すものです。さらに、本研究で提案した「反応場設計」の考え方は、圧電触媒に限らず、光触媒や電極触媒など、幅広いCO₂変換技術への応用が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2026年6月1日(月)(現地時間)に米国科学誌 『ACS Catalysis』 (オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Unlocking Enhanced Piezocatalytic CO₂ Reduction on BaTiO₃ via Cu Single Atoms within a Hydrophobic Metal−Organic Framework Shell”
著者名: Jing Cao, Yoshifumi Kondo, Aoi Sasaki, Yeongjun Seo, Tomoyo Goto, Kohsuke Mori, Tohru Sekino
DOI:https://doi.org/10.1021/acscatal.6c02044
なお、本研究の一部は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)の「科研費若手研究(25K17915)」、公益財団法人増屋記念基礎研究振興財団 2026年度研究助成、 「人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンス」(文部科学省)の支援のもと、大阪大学産業科学研究所附属総合解析センター、九州シンクロトロン光研究センターの九州大学ビームライン(SAGA-LS/BL06)、大阪大学マテリアル先端リサーチインフラ設備供用拠点(ARIM)、東京科学大学コアファシリティセンターのご協力を得て実施されました。

参考URL

近藤吉史助教 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/1922f157de8d5165.html
関野徹教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/9967e6c7e17dfe29.html

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