
生体触媒による排ガスおよび大気レベル低濃度CO₂の資源化
―酸化還元酵素の卓越した機能を利用した脱炭素技術の実現―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 持続可能な社会の実現に向けた戦略の一つとして、CO2を有用な化合物へ変換する脱炭素技術の開発が期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
触媒反応/電子移動/反応場/酸化還元酵素/酵素電極/電極界面/生体触媒/バイオリアクター/脱水素/バイオデバイス/持続可能/省エネ/還元反応/電極反応/CO2還元/バイオミメティクス/環境負荷/環境問題/酸化還元/省エネルギー/二酸化炭素/生体内/CO2濃度/立体構造
この研究の主な対象者企業・研究者の方
公開日
研究者情報
研究者名Ami Kobayashi
ORCID
研究者名
足立 大宜
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
Konatsu Ichikawa
ORCID
研究者名
北隅 優希
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
白井 理
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
宋和 慶盛
京都大学 教育研究活動データベース
概要
京都大学大学院農学研究科の小林亜美 博士後期課程学生、足立大宜 同特定研究員、市川小夏 同博士後期課程学生、北隅優希 同准教授、白井理 同教授、宋和慶盛 同助教らの研究グループは、Methylorubrum extorquens AM1由来のギ酸脱水素酵素(FoDH1)が触媒するCO2還元反応を利用し、気体状CO2を資源化するバイオデバイスを開発しました。そして、大気や排ガスに相当する低濃度のCO2を回収できることを実証しました。持続可能な社会の実現に向けた戦略の一つとして、CO2を有用な化合物へ変換する脱炭素技術の開発が期待されています。現在、無機触媒を用いたメタネーション技術がすでに実証試験段階にありますが、CO2の回収・分離工程が不可欠であることに加え、高温・高圧の反応条件や副生成物の生成による変換効率の低下が課題となっています。一方で、生体触媒である酵素による触媒反応は、省エネルギーかつ低環境負荷な技術基盤として近年注目を集めています。特に、酵素と電極を電気的に接続し、人為的に触媒反応を制御する直接電子移動型酵素電極反応(DET型反応)は、常温・常圧下で高効率かつ高選択的な反応を実現することができます。本研究で着目したFoDH1は高いDET型CO2還元活性と酸素耐性を有しており、2022年に立体構造が解明されたことで、酵素-電極間相互作用に基づく合理的な反応場設計が可能となりました。そこで本研究では、FoDH1を活用し、高効率なCO2資源化バイオリアクターの開発を行いました。通常のFoDH1によるDET型反応は、基質であるCO2を溶解した溶液中で行われますが、CO2の溶解と拡散が律速段階となり、電極への迅速なCO2の供給が困難でした。そこで、気体を直接反応場へ供給できるガス拡散型電極(GDE)を利用したシステムを構築しました。そして、本システムが排ガス中のCO2濃度に相当する10%以下の低濃度CO2領域において優れたCO2還元活性を示すことを実証し、さらに、大気中濃度(0.04%)においても明瞭なCO2還元反応を観測できました。
本研究成果は、2026年8月3日に、国際学術誌「ACS Omega」にオンライン掲載されました。

研究者のコメント
「私たちの研究チームは、ギ酸脱水素酵素を利用した気体状CO2資源化にこれまで取り組んできました。本研究ではDET型CO2還元反応に着目し、効率的な電子移動に適した酵素電極界面の構築を行いました。今後は今回開発したシステムを基盤として、スケールアップを見据えた応用研究に取り組んでいきます。」(小林亜美)
「CO2資源化は地球規模の環境問題を解決する重要な技術です。生体触媒である酵素が持つ卓越した機能を活用し、従来とは全く異なる視点でCO2資源化技術を提案していきたいと考えています。BEYOND 2050までを視野に入れて、今後、生体内の代謝を模倣したバイオミメティクスの学術研究および社会実装に挑戦し続けていきます。」(宋和慶盛)
京都大学 研究