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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年8月21日

\100歳を超えて増加する免疫細胞/ 超高齢期のT細胞免疫の再編成を明らかに

CD4陽性キラーT細胞の加齢変化を特定

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
老化に伴う免疫変化を「衰え」だけでなく、体内環境の変化に応じたT細胞免疫の再編成として捉える手がかりとなり、健康長寿の仕組みの理解につながることに期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域生物学総合生物医歯薬学
【Sagaキーワード】
人工知能(AI)/免疫機能/クローン/一細胞/加齢変化/老化細胞/T細胞受容体/T細胞/がん細胞/一細胞解析/血液/受容体/免疫細胞/サイトカイン/遺伝子/遺伝子発現/加齢/健康長寿/高齢者/超高齢者/老化
2026-8-20●生命科学・医学系蛋白質研究所准教授橋本 浩介

発表のポイント

110歳以上の超高齢者に多くみられるCD4陽性キラーT細胞を詳しく解析することで、超高齢期のT細胞免疫が再編成されている兆候を見出しました。
100歳以上の長寿者から得た単一細胞データを軸に、1,500人規模の公開データを加えて解析対象を0歳から110歳代まで広げ、AIモデルを用いて統合的に解析することで、CD4陽性キラーT細胞の増加時期と特徴が明らかに。
老化に伴う免疫変化を「衰え」だけでなく、体内環境の変化に応じたT細胞免疫の再編成として捉える手がかりとなり、健康長寿の仕組みの理解につながることに期待。

発表概要

大阪大学蛋白質研究所の橋本浩介准教授、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通センター長、理化学研究所のピエロ・カルニンチ チームディレクターからなる共同研究グループは、スーパーセンチナリアン(110歳以上)に多くみられるCD4陽性キラーT細胞を詳しく解析し、超高齢期のT細胞免疫が再編成されている兆候を見出しました。
CD4陽性キラーT細胞は、通常は少数しか存在しない特殊なT細胞集団です。これまでに研究グループは、スーパーセンチナリアンでこの細胞の増加を報告しています。
今回、共同研究グループは、センチナリアン(100歳以上)の長寿者から得た単一細胞データを軸に、大規模公開データを加えて解析対象を0歳から110歳代まで広げ、AIモデルを用いて統合的に解析しました。その結果、CD4陽性キラーT細胞は90歳代までは低い割合にとどまり、100歳代以降で増加する傾向を示しました。また、増加した細胞は疲弊状態を示さず、同じクローンに由来する細胞でも多様なサイトカイン応答を示すことが分かりました(図1)。
先行研究では、CD4陽性キラーT細胞ががん細胞や老化細胞を直接攻撃し排除することが報告されています。本研究成果により、超高齢期では、加齢に伴って生じやすくなるこうした異常細胞への対応として、T細胞免疫の再編成が起きている可能性が考えられます。また、超高齢期における免疫維持の仕組みの理解につながることが期待されます。
本研究成果は、科学誌「Cell Reports」に、8月20日(木)午前0時(日本時間)に公開されました。



図1. CD4陽性キラーT細胞の増加と多様化

研究の背景

CD4陽性キラーT細胞は、血液中に低い割合でしか存在しない特殊なT細胞集団です。これまで、研究グループはスーパーセンチナリアンにおいて、この細胞の割合が大きく増加することを報告していましたが、対象となる超長寿者と細胞自体の希少さから、人が年齢を重ねる過程でこの細胞がどの時期から増加し、どのような状態にあるのかは十分にわかっていませんでした。

研究の内容

研究グループは、センチナリアン10人とスーパーセンチナリアン10人を含む計28人の血中T細胞について単一細胞解析を行い、CD4陽性キラーT細胞の遺伝子発現や細胞表面タンパク質の特徴を調べました。さらに、その特徴を学習したAIモデルを1500人以上の大規模公開データに適用し、この細胞の割合を解析しました。その結果、CD4陽性キラーT細胞は90歳代までは低い割合にとどまり、100歳代以降で増加する傾向を示すことが分かりました(図2)。
また、CD4陽性キラーT細胞では、同じT細胞受容体をもつ細胞が増えているにもかかわらず、疲弊状態を示さず、多様なサイトカイン応答を示すことが分かりました。さらに、T細胞受容体データベースと照合したところ、一部のT細胞受容体は、がん組織で増加するT細胞と共通していました。これらの結果から、超高齢期ではCD4陽性キラーT細胞の増加を伴うT細胞免疫の再編成が起きている可能性が考えられます。



図2. 年齢層ごとのCD4陽性キラーT細胞の割合

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、超高齢期における免疫変化を、免疫機能の低下としてではなく、体内環境の変化に応じたT細胞免疫の再編として捉える手がかりが得られました。今後、健康長寿にかかわる免疫状態の理解につながることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2026年8月20日(木)午前0時(日本時間)に科学誌「Cell Reports」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“CD4 CTLs in Supercentenarians: Signs of Adaptive Expansion in Healthy Aging”
著者名:Kosuke Hashimoto, Miki Kojima-Ishiyama, Hajime Inokuchi, Michihira Tagami, Takashi Sasaki, Kenji Mizuguchi, Yasushi Okazaki, Ichiro Taniuchi, Kazuyoshi Ishigaki, Nobuyoshi Hirose, Piero Carninci, and Yasumichi Arai
DOI:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2026.117728
なお、本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業、大阪大学蛋白質研究所 新分野開拓支援プログラム、武田科学振興財団、持田記念医学薬学振興財団、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート・クラスター研究推進プロジェクトなどの支援を受けて行われました。

参考URL

橋本浩介 准教授
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/c292f5db77e23c2c.html