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九州大学 研究Discovery Saga
2026年8月7日

制御性B細胞を「時限的」に誘導する

感染症のリスクを抑えた免疫寛容の誘導法 工学研究院 森健 教授

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
アレルギー疾患や抗薬物抗体(ADA)の治療・予防では、寛容性樹状細胞(tDC)による免疫寛容誘導が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
化学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
芳香族/芳香族炭化水素/持続可能/持続可能な開発/ナノ粒子/アゴニスト/炭化水素/免疫系/抗原提示/マウスモデル/免疫抑制/臨床応用/生体防御/喘息/B細胞/T細胞/バイオ医薬品/マウス/抗原/抗原提示細胞/受容体/樹状細胞/制御性T細胞/免疫応答/免疫寛容/脾臓/アレルギー/ワクチン/感染症/抗体/臨床研究
2026.08.07 研究成果Life & Health

発表のポイント

アレルギー疾患や抗薬物抗体(ADA)の治療・予防では、寛容性樹状細胞(tDC)による免疫寛容誘導が期待されているが、免疫抑制が長期化し感染症リスクが高まる懸念があった。
本研究では、制御性B細胞(Breg)に着目し、速やかに代謝消失するBreg誘導剤FICZなどを見出した。Bregは誘導剤消失後にもとのB細胞へ戻るため、「時限的」な免疫寛容誘導が可能となる。
FICZ内包ナノ粒子を抗原タンパク質とともにマウスに投与すると、Breg-Treg経路を介した免疫寛容を誘導した。一方で24時間後のワクチン応答は阻害されず、ADA予防およびアレルギー性気道炎症の治療効果も確認した。

発表概要

 アレルギー疾患やバイオ医薬品に対する抗薬物抗体(ADA)の産生は、免疫系が望まない抗原に対して抗体産生することで起こる。その治療・予防には、樹状細胞―制御性T細胞(Treg)経路による抗原特異的な免疫寛容の誘導が使われる。この経路に適した寛容性樹状細胞(tDC)を誘導する薬物によりこの経路を増強する方法が提案され、臨床研究に進んでいるが、tDCの状態が長く続くことで望まない免疫寛容が起こり、感染症のリスクが高まるなどの問題があった。
 九州大学の大学院工学研究院、薬学研究院、生体防御医学研究所、および北九州工業高等専門学校からなる研究グループは、tDCに代わる寛容誘導に適した抗原提示細胞として、従来、あまり注目されてこなかった制御性B細胞(Breg)に注目した。Bregは芳香族炭化水素受容体(AhR)のアゴニストにより誘導されるが、アゴニストはBreg自身によって代謝・消失し、Bregはもとのナイーブ様B細胞に戻る。したがって免疫寛容を「時限的」に誘導するのに適していると考えられた。
 この仮説のもと、研究グループは代謝・消失の速いAhRアゴニストとしてFICZなどを見出した。FICZをナノ粒子に内包し脾臓のB細胞への送達効率を高めたところ、Breg-Treg経路を増強し、同時に投与した抗原タンパク質に対して免疫寛容を誘導した。本ナノ粒子製剤をマウスモデルに適用したところ、バイオ医薬品に対するADA産生の予防効果、およびアレルギー性喘息の治療効果が示された。
 本研究は、Bregを寛容性樹状細胞とすることで、初めて「時限的な」免疫寛容の誘導に成功した。望まない抗体産生に起因する疾患に対して、正常な免疫応答への影響を抑えた予防・治療薬として魅力的であり、ヒトへの臨床応用が期待される。
 本研究成果は、Controlled Release Societyの学術誌「Journal of Controlled Release」に2026年8月10日号に掲載予定であり、5月28日にオンライン公開されている。
(図1) 本製剤によるBreg-Treg経路の時限的な増強



Breg誘導剤を内包したナノ粒子を投与すると、(B) B細胞がナノ粒子を取り込み、(C) IL-10を産生する制御性B細胞(Breg)に分化する。(D) これらのBregが抗原を取り込み、抗原提示細胞としてはたらくことで抗原特異的な制御性T細胞(Treg)を誘導する。Breg誘導剤は速やかに代謝され、(A) BregはもとのB細胞に戻り、通常の免疫応答を回復する。

論文情報

掲載誌:Journal of Controlled Release
タイトル:A transient, B cell–targeted tolerance switch using nanoparticles loaded with metabolizable AhR agonists for antigen-specific immune regulation
著者名:Takanatsu Hosokawa*, Takuro Yamada, Gyeongwoo Lee, Kengo Hamamura, Yuya Yoshida, Daisuke Takahashi, Teruki Nii, Akihiro Kishimura, Daisuke Murakami, Naoya Matsunaga, Koji Hase, Yoshiki Katayama*, Yoshihiro Baba*, Takeshi Mori*
DOI:10.1016/j.jconrel.2026.115059
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お問い合わせ先
工学研究院 森健 教授
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