植物性廃棄物を園芸資材に転換した際の脱炭素効果を実証
―カーボンニュートラルな廃棄物処理と園芸生産へ道筋―
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
産学連携/温室効果ガス/外来種/再資源化/地球温暖化/温室効果/カーボンニュートラル/カーボン/リサイクル/環境負荷/二酸化炭素/廃棄物/廃棄物処理/CO2固定/園芸学/経済成長/農地/イネ/バイオマス/土壌/温暖化
2026年08月03日
研究・産学連携
概要
千葉大学環境健康フィールド科学センター/大学院園芸学研究科の黒沼尊紀准教授、渡辺均教授と本田技術研究所らの研究チームは、河川堤防の刈草注1)を対象に、焼却・炭化・堆肥化した際の温室効果ガス収支を比較評価しました。その結果、炭化および堆肥化が地域の廃棄物処理と園芸生産のカーボンニュートラル化を強力に後押しすることを、世界に先駆けて定量的に明らかにしました。本研究成果は、2026年6月30日に、学術誌Journal of Environmental Managementで公開されました。
(論文はこちら:10.1016/j.jenvman.2026.130335)

図 刈草処理方法別の温室効果ガス収支(左)とバイオ炭・堆肥の農業利用の価値(右)
当該論文(Kuronuma et al., 2026)より引用改変
研究成果のポイント
・刈草を焼却する場合、温室効果ガスを放出しますが、炭化と堆肥化はその製造工程で発生する環境負荷を考慮しても、温室効果ガスの吸収に寄与することが明らかとなりました(図左)。・堆肥化はこれまで国際的にもCO2固定化技術としては認められていませんでしたが、本研究の新たな解析手法により、炭化とともに温室効果ガスの吸収能を有することが実証されました。これらのデータ(図左)に、地域の刈草発生量を掛け合わせることで、マクロな範囲で環境への影響を推定することが可能です。
・実験で製造されたバイオ炭と堆肥は、市販品と同等の品質・栽培性を示し、これらをピートモスやパーライト、元肥の代替として園芸生産に使用した場合、大幅にフットプリント注4)を低減させることが明らかとなりました(図右)。従来、未利用バイオマスの循環利用は農地投入が議論の中心でしたが、適正な再資源化を行えば、苗・鉢物生産用の資材としても活用可能であることが実証されました。
■今後の展望(研究者コメント)
本研究は徳島県の取り組みをモデルにした実験です。これらの知見は、全国各地の廃棄物処理と園芸生産の課題解決に寄与し、未利用バイオマスの循環利用がGX化注5)を強力に後押しすることを示しています。
用語解説
注1)河川堤防の刈草:河川堤防では、堤体強度の維持や安全確認のため、年1~2回程度の除草と集草が行われ、年間約240億円の費用がかかっている。集草された刈草の多くは、焼却処理されているが、一部の地域では堆肥化が行われている。本研究では、事前に植生調査を実施し、供試した刈草は主に河川堤防等で拡大が問題となっているイネ科の外来種であるジョンソングラス (Sorghum halepense) で構成されていることを確認。注2)化成肥料:植物の栄養となる人工の肥料。即効性があり広く普及しているが、資源の枯渇や価格高騰のリスクに加え、製造・輸送時に温室効果ガスを多く排出する課題がある。
注3)ピートモス:水ゴケ等が堆積してできた天然の土壌資材。保水性に優れ園芸に不可欠だが、数千年かけて蓄積された「炭素の貯蔵庫」を掘り起こすため環境負荷が高い。地球温暖化に繋がるとして世界中で採取や使用の規制が進んでいる。
注4)フットプリント(カーボンフットプリント):商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至る全工程で排出される温室効果ガスの量を、CO2に換算して「見える化」した仕組み。この値が小さいほど、環境への負荷が少ないことを示す。
注5)GX:グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)の略。エネルギーの安定供給・経済成長・温室効果ガスの排出削減の同時実現を目指す取り組みを指す。今回はエネルギーではなく、「資源」の安定供給という観点から、本用語を使用。
論文情報
タイトル:From green waste to horticultural resources: A novel approach to quantifying greenhouse gas emission factors for decision-making著者:Takanori Kuronuma, Hitoshi Watanabe, Azusa Gomi, Shohei Masuda, Takuya Mito
雑誌名:Journal of Environmental Management
DOI:10.1016/j.jenvman.2026.130335
■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の支援によって実施されました。
・JSPS科研費(Grant Number 23K13975, 25K02040)
プレスリリース本文はこちら
千葉大学 研究