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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年7月29日

ブラックホール周辺の衝撃波による粒子加速を解明

高エネルギーニュートリノの起源に新たな手がかり

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学数物系科学工学総合生物
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
スーパーコンピュータ/地球科学/高エネルギー/高エネルギー粒子/陽子/ニュートリノ/ブラックホール/宇宙物理学/活動銀河/観測装置/巨大ブラックホール/銀河/磁場/衝撃波/粒子加速/持続可能/持続可能な開発/SQUID/シミュレーション/レーザー/大規模シミュレーション/第一原理/極限環境
2026-7-24●自然科学系レーザー科学研究所教授佐野 孝好

発表のポイント

ブラックホール周辺に形成される衝撃波による粒子加速の仕組みをスーパーコンピュータシミュレーションで解明
衝撃波が陽子を効率よく加速することが、これまで未解明だったブラックホール周辺の高エネルギーニュートリノの起源として説明できることを示した
弱い衝撃波でも粒子加速が成立することを明らかにし、従来の理解を更新




図1. ブラックホール周辺の衝撃波による粒子加速とニュートリノ生成の模式図。ブラックホール周囲の高温プラズマ(コロナ)では、ガスの流れによって衝撃波が形成される。この衝撃波の中で粒子が繰り返し往復することでエネルギーが増加し、高エネルギー粒子となる。これらの粒子は周囲の物質や光と相互作用してニュートリノを生成する。ニュートリノは外部へ放出される一方で、ガンマ線はコロナ内で吸収されると考えられる。

発表概要

大阪大学レーザー科学研究所 Minh Nhat Ly特任研究員、千徳靖彦教授、佐野孝好教授、芝浦工業大学 井上芳幸教授(研究開始当時:大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻 准教授)らの研究グループは、巨大ブラックホール周辺に形成される衝撃波によって、粒子が効率的に加速される仕組みを大規模シミュレーションにより解明しました。
近年、南極の観測装置IceCubeにより、近傍の活動銀河から高エネルギーニュートリノが検出されています。しかし、その起源となる高エネルギー粒子がどのように生成されるのかは未解明でした。
ブラックホール周辺での粒子加速には、乱流や磁気再結合など複数の理論が提案されてきましたが、本研究ではその中でも「衝撃波による加速」に着目しました。
その結果、衝撃波によって陽子が効率的に加速され、観測されているニュートリノを説明し得ることを示しました。特に、これまで効率が低いと考えられていた弱い衝撃波でも粒子加速が成立することを明らかにした点が重要です。
本成果は、高エネルギーニュートリノの起源の理解に新たな手がかりを与えるものです。
本研究成果は、米国科学誌「Astrophysical Journal」に、6月3日(水)に公開されました。

研究の背景

ニュートリノは、ほとんど物質と相互作用せず宇宙を直進する粒子であり、宇宙の極限環境を探る重要な手がかりです。近年、IceCube観測装置により、近傍の活動銀河から高エネルギーニュートリノが検出されました。
しかし従来の理論では、ニュートリノが生成される場合には同時にガンマ線も観測されるはずです。ところが実際にはガンマ線が不足しており、この矛盾は未解決問題となっていました。
この問題を説明する有力な候補として、ブラックホール周辺の「コロナ」と呼ばれる高温プラズマ領域(ブラックホールコロナ)が注目されています。この領域ではガンマ線は吸収される一方で、ニュートリノは外部へ逃げることができます。
しかし、その内部でニュートリノの元となる高エネルギー粒子がどのように加速されるのかは、これまで明確には分かっていませんでした。

研究の内容

衝撃波とは、超音速の流れによって生じる急激な変化の層であり、ブラックホールに落ち込むガスの運動などによって形成されます。
研究グループは、プラズマ中の粒子と電磁場の振る舞いを直接計算する最先端のシミュレーション手法を用い、衝撃波内部での粒子加速過程を詳細に解析しました。
その結果、
· 粒子が衝撃波を繰り返し往復することでエネルギーを増加させる
· 衝撃波のエネルギーの約10%が高エネルギー粒子に変換される
· 弱い衝撃波でもこの加速過程が効率よく働く
ことを明らかにしました。
さらに、この過程で生成される粒子のエネルギーは、数十〜数百テラ電子ボルトに達し、観測されているニュートリノを説明し得ることも示しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究は、ブラックホール周辺での粒子加速の仕組みを定量的に示した成果であり、以下の点で重要です。
· 高エネルギーニュートリノの起源という宇宙物理学の重要課題に新たな解釈を提供
· ブラックホール近傍の極限環境における物理過程の理解を前進
· 観測と理論に加え、第一原理シミュレーションの重要性を示す
特に、「弱い衝撃波でも効率的に粒子が加速される」という結果は、従来の理解を見直す契機となる可能性があります。

特記事項

本研究成果は、2026年6月3日(水)に米国科学誌「Astrophysical Journal」に掲載されました。
タイトル:“Proton Acceleration by Collisionless Shocks in Supermassive Black Hole Coronae: Implications for High-Energy Neutrinos”
著者名:Minh Nhat Ly, Yoshiyuki Inoue, Yasuhiko Sentoku, and Takayoshi Sano
DOI:https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae61ab
なお、本研究成果は、大阪大学D3センターのSQUIDの公募型利用制度、名古屋大学のスーパーコンピュータ「不老」のHPCI利用制度、国立天文台のHPE Cray XD2000を利用して得られたものです。また本研究は、日本学術振興会 学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金(JP18H05458、JP19K14772、JP22K18277、JP23H04864、JP24H00204、JP26H00604)、国立天文台アルマ研究支援プログラム(2021-17A)、および大阪大学レーザー科学研究所・共同利用研究の支援のもと実施されました。

参考URL

佐野 孝好 教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/f72a96021e7a3377.html

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