抗菌薬で大腸がんの治療抵抗性を克服
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 高い安定性と選択性を有するCLDN14標的薬の開発が進むことで、治療抵抗性克服効果を有する新たな作用機序に基づく抗がん剤の開発につながることが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
情報学/生体情報/QCM/振動子/選択性/マイクロ/水晶振動子マイクロバランス/ドッキング/水晶振動子/一細胞/抵抗性/細胞間接着/ROS/橋渡し研究/治療抵抗性/発現解析/mRNA/小児外科/大腸/エンドサイトーシス/オキサリプラチン/がん細胞/がん治療/スクリーニング/ストレス応答/スフェロイド/タンパク質発現/ドキソルビシン/リソソーム/活性酸素/活性酸素種/抗菌薬/創薬/大腸がん/低分子化合物/ストレス/タイトジャンクション/医療情報/抗がん剤/酸化ストレス/小児
研究教育成果
研究概要
生化学研究室 水上優子 (2024年度学部卒)、五十里 彰 教授らの研究グループは、抗菌薬のムピロシン(MUP)が大腸がん細胞においてタイトジャンクション分子claudin-14(CLDN14)の発現を低下させ、抗がん剤抵抗性を改善することを明らかにしました。本研究成果は2026年7月6日に国際学術誌「Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Cell Research」に掲載されました。主な共同研究者
石川 吉伸 教授(湘南医療大学 薬学部)
篠田 雄大 研究員(理化学研究所 生命医科学研究センター)
遠藤 智史 准教授(岐阜大学 大学院 連合創薬医療情報研究科)
松永 俊之 教授(岐阜薬科大学 生体情報学研究室)
松橋 延壽 教授(岐阜大学 大学院医学系研究科 消化器外科・小児外科)
これまでに同研究グループは、大腸がん組織に細胞間接着に関わるCLDN14が高発現しており、抗がん剤抵抗性に寄与することを報告してきました(J. Cell. Biochem., 2025年)。特に三次元スフェロイドモデルでは、CLDN14が細胞間バリアを形成することで抗がん剤の浸透を妨げ、薬剤抵抗性を高めると考えられます。しかし、CLDN14を直接標的とする低分子化合物はこれまで未開発でした。
本研究では、FDA承認薬ライブラリーを用いた構造ベースバーチャルスクリーニングを実施し、CLDN14に結合する候補化合物を探索しました。その結果、抗菌薬として臨床使用されるMUPが、CLDN14の第2細胞外ループに結合すると予測されました。さらに、水晶振動子マイクロバランス(QCM)解析により、MUPがCLDN14タンパク質に結合することが実験的に確認されました(図1)。
図1 MUPとCLDN14の結合解析
(A) MUPとCLDN14のドッキングモデル
(B) MUPとCLDN14のQCM解析
次に、ヒト大腸がん由来DLD-1細胞を用いてMUPの作用を解析しました。その結果、MUPはCLDN14のmRNA発現には影響を与えず、タンパク質量を選択的に低下させることが明らかとなりました(図2)。また、CLDN14タンパク質の分解促進には、クラスリン依存性エンドサイトーシスおよびリソソーム分解系が関与していることが示されました。
図2 CLDNの発現解析
(A) CLDN1とCLDN14のタンパク質発現に対するMUPの効果
(B) CLDN1とCLDN14のmRNA発現に対するMUPの効果
三次元スフェロイドモデルを用いた解析では、MUP処理により細胞障害性抗がん剤であるドキソルビシンやオキサリプラチンの作用が増強されることが明らかとなりました(図3)。MUPは抗がん剤の腫瘍内部への浸透性を亢進させるとともに、活性酸素種(ROS)による酸化ストレス応答機構の抑制を介して抗がん剤抵抗性を改善すると考えられました。
図3 大腸がんスフェロイドの抗がん剤感受性
細胞障害性抗がん剤感受性に対するMUPの効果
本研究成果のポイント・今後期待される成果
本研究により、FDA承認薬であるMUPがCLDN14の発現を制御し、大腸がん細胞の抗がん剤抵抗性を改善する可能性が示されました。MUPは血中安定性が低いため、そのまま大腸がん治療薬として利用することは困難です。現在、本研究グループではMUPの活性本体(ファーマコフォア)の同定と、CLDN14発現低下作用をもつ新規類縁化合物の探索を進めています。今後、高い安定性と選択性を有するCLDN14標的薬の開発が進むことで、治療抵抗性克服効果を有する新たな作用機序に基づく抗がん剤の開発につながることが期待されます。研究助成
本研究は、JSPS科研費(19H03373)、AMED橋渡し研究、COMIT創薬シーズ共同研究、双葉電子記念財団、旗影会、小林財団、越山科学技術振興財団、小川科学技術財団、高橋経済産業研究財団、テルモ生命科学振興財団、武田科学振興財団、などの助成支援を受けて実施されました。論文情報
雑誌名:Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Cell Research論文名:Mupirocin-mediated downregulation of claudin-14 enhances chemosensitivity in human colorectal cancer cells
著者:Mizukami Y, Ando T, Tosaki S, Ishikawa Y, Shinoda T, Shirouzu M, Yoshino Y, Morimoto K, Endo S, Matsunaga T, Matsuhashi N, Ikari A
DOI番号:DOI: 10.1016/j.bbamcr.2026.120181
岐阜薬科大学 研究