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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年7月27日

単一材料で同一箇所から多色発光!電流量で波長が変わらない次世代LEDを実現!

超高精細フルカラー・マイクロLEDディスプレイ実現に新たな道

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
超高解像度かつ広色域・波長安定のフルカラーマイクロLEDディスプレイの実現に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学化学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
ウェアラブル/電流駆動/希土類元素/スペクトル/発光スペクトル/ディスプレイ/GaN/MOVPE/可視光/共振器/半導体材料/持続可能/省エネ/LED/持続可能な開発/発光ダイオード(LED)/希土類/窒化物/アルミニウム/マイクロ/結晶成長/光共振器/窒化アルミニウム/半導体/インジウム
2026-7-22●工学系工学研究科准教授市川 修平

発表のポイント

窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)に希土類元素のテルビウム(Tb)を添加した発光ダイオード(LED)を開発し、室温電流駆動条件下で、同一箇所から青・緑・黄・赤の多色発光を得ることに成功し、高い波長安定性も示した。
GaN系LEDは、各色をモノリシックに集積することにより次世代のマイクロLEDディスプレイを実現可能なことから、近年高い注目を集めているが、電流量により発光色が変化してしまう大きな課題があった。
Tb添加AlGaN中のアルミニウム(Al)の割合を増やすことで、Tbイオンへのエネルギー輸送過程が円滑になり、発光効率が飛躍的に向上することを発見し、超高解像度かつ広色域・波長安定のフルカラーマイクロLEDディスプレイの実現に期待。

発表概要

大阪大学大学院工学研究科の市川修平准教授らの研究グループは、立命館大学総合科学技術研究機構の藤原康文教授と協力し、希土類元素のテルビウム(Tb)を添加した窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いて、室温で動作する多色発光LED(青・緑・黄・赤)の実証に成功しました。
GaN系LEDは、各色を集積することで、次世代のマイクロLEDディスプレイを実現可能なことから、近年高い注目を集めています。一方で、電流注入量により発光色が変化してしまうことが大きな課題でした。また従来の半導体LEDでは、一つの発光層からは一つの色のみしか実現できないことから、フルカラーディスプレイを実現するために、複数の発光層を積層(あるいは横方向に配置)する必要がありました。
本研究で実現したLEDは、これら双方の課題を打破できる新たな種類の可視光LEDです。このLEDは、電流量を変えても各発光色が全く変化しない極めて高い波長安定性があることを示しました。また、Tb添加AlGaN LEDにおいて、アルミニウム(Al)の組成割合を増加させることでTbイオンへのエネルギー輸送が円滑になり、発光効率が劇的に向上するメカニズムがあることも明らかにしました。
Tb添加AlGaNは、単一材料で安定な可視多色発光を実現できることから、今後LED成膜後に光共振器などを利用して各色の発光比率を自在に制御できれば、複数の発光層の集積が必須だった従来手法とは異なる道筋でのフルカラーモノリシック集積が可能になります。
これらの理由から本成果は、次世代マイクロLEDディスプレイ実現に向けて重要な技術進展と言えます。
本研究成果は、米国科学誌「Applied Physics Letters」に、2026年7月1日(水)に公開され、編集者が選ぶ注目論文「Editor’s Pick」にも選出されました。



図1. 電流注入時に安定な青・緑・黄・赤色発光を呈すTb添加AlGaN LEDの模擬図。

研究の背景

現在、VRやARグラスなどに向けた次世代の「マイクロLEDディスプレイ」が高画質・省エネな技術として注目されています 。その実現には、赤・緑・青(RGB)などの微細なLEDチップを同一基板上に一括して作り込む「モノリシック集積」が求められています 。しかし、現在主流のインジウムガリウム窒化物(InGaN)を用いた緑色や赤色LEDは、電流を増やすと発光する色にずれが生じてしまう(波長シフト)という大きな課題を抱えていました。また、通常の半導体からの発光は、一つの発光層からは一つの色しか実現できないことから、複数の発光層を積層(あるいは横方向に配置)する必要がありました。

研究の内容

本研究グループは、一つの材料で多色に光り、周辺環境の変化に発光色が影響されない「希土類元素」を添加した半導体に注目しました。なかでも、青・緑・黄・赤色と同時に4色で発光するTbイオンに着目し、結晶成長過程でTbを添加したAlGaN半導体による新たな可視光LEDの実現を目指しました。作製にあたっては、藤原教授の協力のもと、すでにGaN系半導体の量産に使用されている手法(MOVPE法)を利用しました。実際に作製したTb添加AlGaN LEDに対して、室温下で電流を流すことでTbイオン由来の安定した4色の発光が得られることを実証しました。
研究の結果、母体となるAlGaN半導体のアルミニウム(Al)の割合を増やす(例:62%や68%など)ほど、Tbイオンへ効率よくエネルギーが伝達され、発光効率(外部量子効率)が劇的に向上する機構があることを突き止めました。さらに、発光層の下地層に窒化アルミニウム(AlN)を用いると、基板との格子のずれが減少して高い結晶品質が得られることや、Tb周りの結晶に圧縮歪が内包されることで、Tbがより発光しやすい状態(高い放射遷移速度)へと変化することで、電気的・光学的特性が大幅に向上することを実証しました。また、カラーフィルターを通すことで、同じ発光領域からRGBそれぞれの光を選択的に取り出すことにも成功しました。



図2. 実作したTb添加AlGaN LEDの多色発光スペクトル。電流注入量に対して波長が極めて安定。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、単一の半導体材料(Tb添加AlGaN)から、電流変化に影響されない安定した多色発光が得られることが示されました。これにより、RGB個別のチップを一つずつ並べる複雑な製造工程から脱却し、同一基板上にフルカラーLEDを一括で作り込む「モノリシック集積」の実現可能性が高まりました。製造工程の大幅な効率化につながるだけでなく、スマートグラスやウェアラブル端末に不可欠な超小型・高精細フルカラーディスプレイの実用化を加速させる画期的な成果です。

特記事項

本研究成果は、2026年7月1日(水)に米国科学誌「Applied Physics Letters」(オンライン)に掲載されました。また、編集者が選ぶ注目論文「Editor’s Pick」に選出されました。
タイトル:“Ultra-stable multiple emission wavelengths produced by Tb-doped AlxGa1-xN-based light-emitting diodes”
著者名: Shunsuke Yamazaki, Shuhei Ichikawa, Takenori Iwaya, Jun Tatebayashi, and Yasufumi Fujiwara
DOI:https://doi.org/10.1063/5.0331734
なお、本研究の一部は、JSPS科研費(No. 23H05449およびNo. 25K00063)、JST創発的研究支援事業 (FOREST)(Grant No. JPMJFR243V)の支援を受けて行われました。

参考URL

市川 修平准教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/32d0649cfea01567.html
市川 修平准教授 研究ホームページ
https://sites.google.com/view/ichikawa-gr/home
藤原 康文教授 研究室ホームページ
https://fujiwara-lab.ritsumei.ac.jp/
「株式会社IntraPhoton」ホームページ(※藤原教授がCTOを務める立命館大学発スタートアップ企業)
https://intraphoton.com/

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