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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年7月9日

人工肩関節置換術の術式によって骨密度の低下に差があることが明らかに

~骨粗しょう症がリバース型の成績に影響~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
RSAでは、骨粗しょう症を有する患者においてステム先端部周囲の骨密度低下が生じやすく、術後成績にも影響する可能性が示唆
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
最適化/定量評価/持続可能/持続可能な開発/セメント/モデリング/モニタリング/関節/合併症/人工関節/整形外科学/骨折/インプラント/リモデリング/解剖学/骨リモデリング/骨密度/手術/疼痛

2026年7月8日
医学研究科
プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院医学研究科整形外科 中澤 克優病院講師、寺井 秀富教授

発表概要

本研究グループは人工肩関節置換術1の二つの術式「解剖学的人工肩関節置換術2(以下、TSA)」と「リバース型人工肩関節置換術3(以下、RSA)」における、術後2年間の骨の変化を評価しました。その結果、術式によって骨密度の変化の様相が異なり、特にRSAでは骨粗しょう症患者において骨密度低下を起こし、臨床成績不良と関連する可能性が示されました。


本研究成果は、2026年7月1日に国際学術誌「The Bone & Joint Journal」にオンライン掲載されました。



人工肩関節置換術後の骨密度の経時的変化
(写真左:TSA、写真右:RSA)

発表のポイント

人工肩関節置換術の手術後の骨密度を検証。
昨今症例数が増加しているRSAでは、ステム先端およびステム最内側で骨密度が経時的に有意に低下。
さらに、骨粗しょう症患者においては骨密度低下を起こし、臨床成績に影響する可能性を示唆。

<研究者コメント>
これまで股関節など肩以外の人工関節におけるdual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)4を用いた研究では、ステム近位部の骨密度の低下が主に報告されてきました。一方、本研究では、RSAにおいて、ステム遠位部でも骨密度が低下することを確認しました。これは、RSA特有の荷重伝達や骨リモデリングを反映している可能性があり、肩関節領域における新たな知見と考えています。今後は、この骨密度低下が人工関節周囲骨折やインプラントのゆるみなどの合併症にどのように関与するのか、長期的な検討を進めていきたいと考えています。



中澤 克優 病院講師

研究の背景

人工肩関節置換術は、変形性肩関節症、腱板断裂性関節症、修復不能な腱板断裂などに対して、疼痛の改善と肩関節機能の回復を目的に行われる手術です。近年、骨温存や再置換時の抜去のしやすさなどの利点から、セメントを用いないショートステム型インプラントの使用が増加しています。
一方で、人工関節のステム周囲では、術後に骨密度が低下する、いわゆる骨リモデリングやstress shieldingが生じることが知られています。特に股関節領域では、DEXAを用いたステム周囲骨密度の定量評価が広く行われてきました。しかし、肩関節領域、とくにTSAとRSAを比較し、術後早期から2年までの骨密度変化を定量的に評価した報告は限られていました。
これまでの肩関節領域におけるステム周囲骨変化の評価は、単純X線画像を用いた定性的評価が中心であり、骨密度の経時的変化を客観的に捉えることが課題でした。そこで本研究では、DEXAを用いてTSAおよびRSA後のステム周囲骨密度を定量的に測定し、術後2年間の変化と骨粗しょう症、臨床成績との関連を検討しました。

研究の内容

本研究では、セメントレスショートステム5を用いてTSAまたはRSAを施行した患者を対象に、術後3週、6カ月、1年、2年の4時点でDEXAによるステム周囲骨密度評価を行いました。対象はRSA 94例、TSA 43例で、ステム周囲を五つの領域に分け、それぞれのbone mineral density(BMD)6を測定しました。また、骨粗しょう症の有無および術後臨床成績との関連についても検討しました。
その結果、RSAではステム周囲のBMDが術後経時的に低下し、特にZone 3 (ステム先端)およびZone 5 (ステム最内側)で有意な低下が認められました。一方、TSAではZone 2、3、4において術後3週から6カ月にかけてBMDが低下したものの、その後の持続的な低下は限定的でした。
さらに、RSAにおいては、Zone 3のBMD低下が骨粗しょう症と有意に関連していました。また、Zone 3のBMD低下および骨粗しょう症は、American Shoulder and Elbow Surgeons(ASES score)7におけるminimal clinically important difference(MCID)8未達成とも関連していることが分かりました。
本研究の重要な点は、TSAとRSAではステム周囲骨密度の変化パターンが異なることを示した点です。特にRSAでは、骨粗しょう症を有する患者においてステム先端部周囲の骨密度低下が生じやすく、術後成績にも影響する可能性が示唆されました。

期待される効果・今後の展開

本研究により、リバース型人工肩関節置換術後には、特に骨粗しょう症を有する患者でステム周囲骨密度が低下しやすい可能性が明らかになりました。これにより、術前からの骨粗しょう症評価、術後の骨密度モニタリング、骨粗しょう症治療の最適化が、RSA後の長期成績向上に重要である可能性が示されました。
また、骨粗しょう症を有する患者では、セメント固定ステムの選択や、より慎重な術後フォローアップを検討する必要があると考えます。今後は、より長期の経過観察により、ステム周囲骨密度低下が人工関節周囲骨折や無菌性ゆるみなどの合併症に実際に関与するかを明らかにする必要があります。
本研究成果は、人工肩関節置換術を受ける高齢患者、特に骨粗しょう症を有する患者に対する術前評価や術後管理の質を高め、より安全で長期的に安定した治療成績につながることが期待されます。

用語解説

※1人工肩関節置換術:損傷または変形した肩関節を人工関節に置き換える手術。変形性肩関節症、腱板断裂性関節症、修復不能な腱板断裂などに対して行われる。
※2解剖学的人工肩関節置換術(TSA):Total shoulder arthroplastyの略。肩甲骨側と上腕骨側を、本来の肩関節の形態に近い形で人工関節に置換する方法。
※3リバース型人工肩関節置換術(RSA):Reverse shoulder arthroplastyの略である。肩甲骨側と上腕骨側の関節構造を通常とは逆にした人工関節であり、腱板機能が低下した症例でも三角筋の力を利用して肩を挙上しやすくする手術で、昨今症例数も増加傾向にある。
※4dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA):2種類のX線を用いて骨密度を測定する検査法であり、骨粗しょう症の診断や人工関節周囲の骨密度評価に用いられる。
※5セメントレスショートステム:骨セメントを使用せずに骨へ固定する短い人工関節ステム。骨を温存しやすく、将来的な再手術時に抜去しやすい利点がある。
※6bone mineral density(BMD):骨密度を意味する。骨の強さを反映する重要な指標。
※7American Shoulder and Elbow Surgeons(ASES score):肩関節の疼痛や機能を評価する臨床スコア。
※8minimal clinically important difference(MCID):患者にとって臨床的に意味があると考えられる 最小限の改善量を示す指標。

掲載誌情報

【発表雑誌】The Bone & Joint Journal
【論文名】 Time-course changes in bone mineral density after anatomical and reverse total shoulder arthroplasty
: a dual-energy X-ray absorptiometry-based study
【著者】 Katsumasa Nakazawa, Tomoya Manaka, Yoichi Ito, Yoshihiro Hirakawa MD, Rei Nishiura, Naoki Oi, Hidetomi Terai
【掲載URL】https://doi.org/10.1302/0301-620X.108B7.BJJ-2025-1462.R1

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学
病院講師 中澤 克優(なかざわ かつまさ)
TEL:06-6645-3851
E-mail:k-nakazawa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:西野
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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